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【2024年大河ドラマ】令和6年「光る君へ」吉高由里子演じるヒロイン“まひろ”の日常を平安文学『紫式部日記』に垣間見る

古典文学
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報道によると、令和6年(2024年)NHK大河ドラマは「光る君へ」。その主人公は平安文学の最高傑作『源氏物語』を生み出した紫式部(むらさきしきぶ)とのこと。

脚本は以前にもNHK大河ドラマ「功名が辻」を手掛けた大石静さん、主演は「篤姫」以来2度目の大河出演となる吉高由里子さん。

高い教養を積み、平安文学の最高傑作『源氏物語』を生み出した紫式部。菊池容斎『前賢故実』より

以前から平安文学に憧れをもつファンの一人としては、誠に喜ばしい限り。早くも放送が楽しみです。

さて、ヒロインの“まひろ(ドラマのオリジナル設定)”こと紫式部はどのような日常生活を送っていたのでしょうか。

今回は彼女の書いた『紫式部日記』より、その一幕を垣間見てみたいと思います。

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弁の宰相の君の寝顔をのぞき込み……

8月26日のこと。紫式部がお仕えしている藤原彰子(ふじわらの しょうし。一条天皇の中宮)が御薫物(おたきもの。練り香)の調合を終えたので、宮中の人々に配ってあげました。

御薫物とは焚いて香りを出すタイプのお香で、調合によって様々な香りを楽しんだと言います。のっけから雅びやかですね(実際はなかなか身体を洗えないので、体臭をごまかすためとも言われますが……)。

藤原彰子。『紫式部日記絵巻』より

「はい、皆さんどうぞ。あなたたちもご苦労さま」

「「「ありがとうございます!」」」

お香を練り丸める手伝いをしていた女房たちも、その分け前にあずかって大喜びです。

「さて、と……」

中宮陛下の御前を辞して、自分の部屋に戻ろうとした紫式部は、弁の宰相の君(べんのさいしょうのきみ)の部屋に通りがかりました。

(いるかな?)

気まぐれにのぞき込んでみると、どうやら昼寝をしている模様。その様子をまた実に細かく観察しています。

萩(はぎ。紫がかった明るい紅)色や紫苑(しおん。くすんだ青紫)色などの袿(うちき)を重ねた上に、特につややかな濃い紅色の打衣(うちぎぬ)をかけて実にカラフル。

袿とは内着、打衣とは糊を引いた布地を砧(きぬた)でよく打ってこなし、貝殻で表面をよく磨いて光沢を出した衣のこと。着るモノ一つとっても手間暇がかかっていることがよく分かります。

万に一つも寝顔を見られないよう襟の中に顔を隠し、硯(すずり)箱を枕に寝ている様子は何ともあどけなく、美しいものでした。

「あらあら、まぁまぁ」弁の宰相の君の寝姿を堪能or監察する紫式部(イメージ)

(まるで、絵に描いたお姫様みたい)

そう思ったが早いか、紫式部は彼女の顔を隠していた袖を取り除けて

「まるで、物語に出て来るお姫様みたいね」

と口にします。思ったことをすぐ口に出して行動に移すって、ちょっと中年っぽいですね。

いきなり起こされた弁の宰相の君は、寝顔を見られた恥ずかしさに抗議します。

「寝ている人をいきなり起こすなんて、ちょっと失礼じゃありませんか!」

顔を赤らめて怒る表情さえ可愛らしい……紫式部はお決まりの詫び言を告げて、早々に退散したのでしょう。

(普段から美しい方なればこそ、こういうギャップがまた“萌える”のよね)

そんな感想を抱いている辺り、全く懲りる様子のない紫式部でした。

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終わりに

二十六日、御薫物あはせはてて、人々にもくばらせたまふ。まろがしゐたる人々、あまたつどひゐたり。

上よりおるる途に、弁の宰相の君の戸口をさしのぞきたれば、昼寝したまへるほどなりけり。萩、紫苑、いろいろの衣に、濃きがうちめ心ことなるを上に着て、顔はひき入れて、硯の筥にまくらして、臥したまへる額つき、いとらうたげになまめかし。絵にかきたるものの姫君の心地すれば、口おほひを引きやりて、「物語の女の心地もしたまへるかな」といふに、見あけて、「もの狂ほしの御さまや。寝たる人を心なくおどろかすものか」とて、少し起きあがりたまへる顔の、うち赤みたまへるなど、こまかにをかしうこそはべりしか。

おほかたもよき人の、をりからに、またこよなくまさるわざなりけり。

※『紫式部日記』より

以上、弁の宰相の君とのやりとりを紹介してみました。往時の彼女たちにしてみれば他愛もない日常の一幕なのでしょうが、もし映像化されたらさぞかし映(は)えることでしょう。

「まったく、もう!」寝ていたところを起こされて、ご機嫌斜め(イメージ)

ちなみに、弁の宰相の君は名を藤原豊子(ほうし)と言い、紫式部と共に中宮彰子に仕える同僚。彰子が生んだ後一条天皇(ごいちじょうてんのう)の乳母も務めています。

大河ドラマ「光る君へ」では、こんなシーンが雅やかに演じられるのでしょう。また文中にも言及されるような、平安貴族たちの装束や作法(有職故実)なども見どころ。

「合戦シーンがなくて退屈」なんて言っていないで、平安時代の王朝文化も堪能する絶好の機会、今から楽しみですね!

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令和6・2024年NHK大河ドラマ「光る君へ」

【放送予定】令和6年(2024年)1月~
【制作予定】令和5年(2023年)夏 クランクイン
【スタッフ】
脚本:大石静
制作:内田ゆき
演出:中島由貴・佐々木善春ほか
2024年大河ドラマ『光る君へ』作・大石静さん 主演・吉高由里子さん

※参考文献:

  • 石井文夫ら訳・校註『新編日本古典文学全集26 和泉式部日記 紫式部日記 更級日記 讃岐典侍日記』小学館、1994年9月

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