NHK大河ドラマ「どうする家康」、皆さんも観ていますか?筆者も徳川家康(演:松本潤)の成長が毎週楽しみです!
第18回放送「真・三方ヶ原合戦」では忠臣の本多忠真(演:浪岡一喜)や夏目広次(演:甲本雅裕)ら多くの将兵を失い、家康は失意のどん底に叩き落されます。
「わしは……皆に生かされた……決して無駄にはせぬ……!」
さて、家康をあと一歩のところまで追い詰めた武田信玄(演:阿部寛)がなぜか撤退。命拾いした家康ですが、心の傷が癒えないところへ新たな女性が現れました。
彼女の名前は“お万(演:松井玲奈)”。池鯉鮒(ちりゅう。知立)神社の娘で、前は正室の瀬名(演:有村架純。築山殿)に仕える侍女でした。
家康の心に入り込む神秘的な女
お万 おまん
[松井玲奈 まついれな]池鯉鮒神社神主の娘。戦災を逃れ、瀬名仕えの侍女となり、やがて浜松城で暮らす家康のそばに仕えることになる。神秘的で妖艶な魅力が漂い、武田信玄との激戦で疲れた家康の心の隙間に入り込む。
※NHK大河ドラマ「どうする家康」公式サイト(登場人物)より
接近する二人がどんな展開を迎えるのか。今回は大河ドラマの予習&復習として、お万の生涯を徹底解説します。
第19回放送「お手付きしてどうする!」これは一波乱ありそうですね。
瀬名(築山殿)に認められず、浜松城から追放される
“お万”は天文17年(1548年)、三河国池鯉鮒明神(愛知県知立市)に仕える永見貞英(ながみ さだひで)の娘として生まれました。
名前には諸説あり、お万(於万)のほかに史料文献によって於古茶(おこちゃ)・於松(おまつ)・菊子(きくこ)・於古満(おこま)などが伝わっています。
一説には於大の方(演:松嶋菜々子)の姪とされ、その場合、家康とはいとこ同士です。
元は築山殿の女中として仕えていたところ、家康が「お手付き」。天正2年(1574年)に次男を生みました。
※一説には双子とも言われ、もう一人の男児は永見貞愛(さだちか。池鯉鮒神社の第32代神主)とも言われます。
……二月八日次郎君生れた(ま)ふ。後に越前中納言秀康卿といへるは是なり。……
※『東照宮御実紀』巻二 元亀三年-天正二年「秀康生」
しかし築山殿は彼女を側室として認めず、浜松城から追い出されてしまいます。家康もかばい切れなかったようです。正室の権限はそれだけ強大なものでした。
そして生まれた男児も於義伊丸(おぎいまる。ほか於義丸、義伊丸、義伊松など)と名づけられ、あまり可愛がられなかったそうです。
ギギ(黄顙魚)というのはナマズの一種。子供につける名前じゃありませんね。もしかして、築山殿の意向(怨み?)もあったのでしょうか。
於義伊丸が家康と初めて対面したのは、4歳となった天正5年(1577年)。腹違いの弟を不憫に思った徳川信康(演:細田佳央太)のとりなしと言われますが、それでも瀬名の生前は子供として認知されなかったそうです。
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側室の地位を確保するも、すでに寵愛を失っていた
天正9年(1579年)に瀬名が家康によって処刑(いわゆる築山殿事件)されると、ようやく於義伊丸が子供として認知されました。
お万も側室としての地位を認められたものの、同じ年に於愛の方(演:広瀬アリス、西郷局)が嫡男となる長松(ながまつ。家康三男・後の徳川秀忠)を生んだため、寵愛が戻ることはなかったようです。
天正12年(1584年)には11歳となった於義伊丸が羽柴秀吉(演:ムロツヨシ)の養子に出され、元服して羽柴三河守秀康(はしば みかわのかみひでやす)と改名しました。
※後に関東の名門・結城(ゆうき)家へ養子入りして結城秀康と再び改名しています。
まだ幼い我が子と引き離され、夫からも愛されないまま不遇の日々を過ごしたお万。やがて慶長5年(1600年)に秀康が越前北ノ庄(福井県福井市)の城主となると、再び息子と一緒に暮らすようになりました。
慶長12年(1607年)に秀康が急死すると出家して長勝院(ちょうしょういん)と号します。家康の許可は得ていなかったものの、特にお咎めはなかったと言います。正直どうでもよかったのでしょうね。
そして元和2年(1616年)に家康が駿府(静岡県静岡市)で亡くなり、自身も元和5年(1619年)12月6日に北ノ庄で生涯に幕を下ろしました。享年73歳。
戒名は長勝院松室妙載大姉(ちょうしょういんしょうしつみょうたいだいし)。墓は孝顕寺(福井県福井市)にあり、永平寺(同県永平寺町)にも分骨されています。
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【お万の生涯・略年表】
天文17年(1548年) | 誕生(1歳) |
天正2年(1574年) | 家康次男・於義伊丸を生む(27歳) |
天正5年(1577年) | 於義伊丸が家康と初対面。認知されず(30歳) |
天正7年(1579年) | 築山殿事件により、側室の地位を獲得(32歳) |
天正12年(1584年) | 於義伊丸が秀吉の養子に出され、秀康と改名(37歳) |
慶長5年(1600年) | 秀康が越前北ノ庄の城主に。母子同居(53歳) |
慶長12年(1607年) | 秀康に先立たれ、出家する(60歳) |
元和2年(1616年) | 家康が亡くなる(69歳) |
元和5年(1619年) | 北ノ庄で亡くなる(73歳) |
以上、ごく駆け足で“お万”の生涯をたどってきました。瀬名に疎まれ、その死後ようやく側室になったはいいが、既に寵愛を失っていたという実に「運のない」人生と言えるでしょうか。
第19回 お手付きしてどうする!
武田軍は撤退し、信玄(阿部寛)は勝頼(眞栄田郷敦)にすべてを託す。信長(岡田准一)は武田に寝返った将軍・足利義昭(古田新太)を京から追放。一方、家康(松本潤)は信玄との激戦で大きな犠牲を払ったショックから、立ち直れないでいた。そんな中、美しい侍女のお万(松井玲奈)に介抱され、つい心を許してしまう。そのことを知った瀬名(有村架純)は浜松を訪ねるが…。
※NHK大河ドラマ「どうする家康」公式サイト(あらすじ)より
「何を考えておられるんじゃあ~!」
石川数正(演:松重豊)の叫びは、きっと家康に向けられたものと思われます。果たして第19回放送「お手付きしてどうする!」どんな展開を迎えるのでしょうね。
恐らく1回きりの登場(秀康の存在は割愛)と思われますが、ならばより松井玲奈の好演に期待しています。
※参考文献:
- 『徳川実紀 第壹編』国立国会図書館デジタルコレクション
- 『NHK大河ドラマ・ガイド どうする家康 前編』NHK出版、2023年1月
- 小楠和正『結城秀康の研究』越前松平家松平宗紀、2006年2月
- 黒田基樹『家康の正妻 築山殿 悲劇の生涯をたどる』平凡社新書、2022年10月
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