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【歴人録】男装の麗人・勝山太夫とはどんな女性?その生涯をたどる【吉原遊女】

歴史人物データベース
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天下御免の色里・吉原遊廓では様々な遊女がおり、時代ごとに活躍していました。

吉原遊女となった経緯も様々で、みんながみんな売られて来た訳ではありません。

今回は男装の麗人として知られた勝山(かつやま)太夫を紹介。果たしてどんな女性で、どんな生涯をたどったのでしょうか。

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丹前風呂の湯女

安達吟光「古今名婦鑑 遊女勝山」

勝山が吉原遊廓に来る前は、神田の湯屋「丹前風呂(たんぜんぶろ)」で湯女(ゆな)を勤めていたと言います。

湯女とは文字通り風呂屋のスタッフで、時折お客さんの背中を流してあげたりマッサージしてあげたりすることもありました。

するとどういう訳か二人はたちまち恋に落ち、仕事中にも関わらず営みを繰り広げてしまうという次第。

要するに現代と同じ「売買春は違法だけど、お互い恋しているなら仕方ないよね」という理屈です。

料金は性行為に対してではなく、背中を流すなどのオプションに対してやりとりしているため、あくまで売買春ではありません。

(いや、普通にダメでしょ……と思ってしまうのは、筆者だけでしょうか)

要するに勝山は、非合法な遊女の一人でした。

なお湯女になる以前の経歴はほとんど知られておらず、生没年から出身地などは謎に包まれています。

男装の麗人として人気に

歌川国貞「古今名婦傳 丹前風呂勝山」

そんな勝山は派手なファッションを好んだらしく、後に勝山髷(~まげ)と呼ばれる武家風の丸髷を考案し、後に丹前・褞袍(どてら)と呼ばれる広袖の綿入れを羽織りました。これも勝山が考案したのだとか。

加えて大小の木刀を差して街を闊歩する姿は、まさに男装の麗人。江戸の若い女性たちにとって、勝山は憧れの的でした。

現代で言えば、宝塚スターに女性たちが夢見るようなものですね。

この武士然たる佇まいから、勝山が元々武家の令嬢だったのではないか?等と噂されたものの、あくまで俗説の域を出ません。

それにしても勝山の人気は大したもので、いい所のお嬢様までもが彼女の生み出した勝山髷を真似たそうです。

まったく、遊女の髪型を真似るなど……親御さんをはじめ、世の大人たちはさぞや嘆いたことでしょう。

しかしファッションと言うものは、たいてい年配世代を嘆かせるもの。今も昔も、若者文化に対する年配者の顰蹙は変わらなかったようです。

警動で吉原遊廓へ送り込まれる

かくして人気者となった勝山ですが、非合法の存在であることには変わりません。

吉原遊廓からの要請により、丹前風呂にも警動(けいどう。非合法売春に対する一斉摘発)が入りました。

天下御免の吉原遊廓を脅かす商売敵であったため、勝山も逮捕されてしまったのです。

果たして勝山はどうなってしまうのか……吉原遊廓送りとなりました。

ただ罰したところで、どうせ他の場所で「恋愛」に発展してしまうでしょう。

それなら売れっ子遊女を吉原遊廓に引き込み、合法的に稼いでいただく算段でした。

時に承応2年(1653年)、勝山は吉原遊女として第2の人生を歩むことになります。

吉原遊廓でも大人気に

太夫道中(花魁道中)の様子。「江都名所 吉原桜之図」より

これまでの湯女稼業に比べ、しきたりや規則の多い吉原遊廓での暮らしは、勝山にとって息苦しかったかも知れません。

しかし勝山は生まれ持った器量を発揮。吉原遊廓でも人気を獲得していき、やがて最高ランクの太夫(だゆう、たゆう)となったのです。

※資料によっては太夫≒花魁(おいらん)としていますが、花魁は太夫が廃れた後に生まれた称号であり、厳密には異なります。

太夫となった勝山は後に勝山草履と呼ばれる朱色の鼻緒が二本ある草履を履き、後世「花魁道中」で踏まれる外八文字(そとはちもんじ)の歩き方を広めました。

※それまでは京都や島原の太夫道中にならい、内八文字を踏んで歩いていたそうです。

吉原遊廓でもファッションリーダーとして活躍していた勝山。

しかし明暦3年(1657年)には吉原遊廓から退き、その後姿を消してしまったのでした。

勝山太夫・基本データ

実名:不詳

生没:生没年不詳

出身:不詳(武家の娘?)

家族:不詳

経歴:湯女→吉原遊女

活動:承応2年(1653年)~明暦3年(1657年)

身分:太夫

考案:勝山髷、丹前(褞袍)、勝山草履、外八文字など

終わりに

今回は男装の麗人として人気を呼んだ吉原遊女・勝山の生涯をたどってきました。

彼女が遺した様々なものが日本の和装文化に今も名残を留め、往時の面影を偲ばせます。

吉原遊郭には他にも様々な遊女がいたので、今後も紹介していきたいです。

※参考文献:

  • 撫子凜『お江戸ファッション図鑑』マール社、2021年1月
  • 撫子凛『江戸御髪 新装版+分冊版』ナンバーナイン、2022年1月

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