蕎麦屋の暖簾に、よく「生蕎麦」などと書いてあります。

これを「きそば」と読むのはよく知られていますが、では「きそば」とは何か、説明できる方はあまり多くありません。
一方で生蕎麦と書いて「なまそば」と読むケースもあります。
果たして「きそば」と「なまそば」では、どのような違いがあるのでしょうか。
という訳で、今回は生蕎麦(きそば)と生蕎麦(なまそば)の違いを紹介したいと思います。
生蕎麦(きそば)とは?

【結論】蕎麦粉100%の蕎麦
つなぎを入れず、蕎麦粉と水だけで麺を打つことを生粉打ち(きこうち)と呼び、要するに十割蕎麦です。
蕎麦粉を生粉(きこ。何も混ぜていない場合に限る)、つなぎの小麦粉などを割粉(わりこ)と言います。
蕎麦につなぎを入れるようになったのは江戸時代の元禄年間(1688〜1704年)末期と言われ(諸説あり)、だいたい18世紀に入ってからでした。
いわゆる二八蕎麦(にはちそば)は、割粉が2割、蕎麦粉を8割で打つことからそのように呼ばれています。
※ほか蕎麦の価格が十六文(2×8=16)だからという説も。
生蕎麦(なまそば)とは?

【結論】茹でる前の蕎麦麺
粉を水で練り上げ、のばして切った時点の蕎麦を指します。
いわゆる生麺であり、まだ茹でていないため、そのままでは食べられません。
蕎麦屋ではこれを短縮して生(なま)と呼んでおり、厨房から生と聞こえたらビールではなく、生麺のことを指しているのでしょう。
まとめ:生蕎麦(きそば)と生蕎麦(なまそば)の違い
生蕎麦(きそば):蕎麦粉100%の蕎麦
生蕎麦(なまそば):茹でて前の生麺
今回は生蕎麦について「きそば」と「なまそば」の違いを紹介してきました。
蕎麦屋の暖簾に「なまそば」と書く(お客さんに提供する)訳はないので、これは「きそば」と分かります。
この豆知識が活きるかはともかく、こういう雑学を仕込むのは楽しいですね。
※参考文献:
- 新島繁『蕎麦の事典』講談社学術文庫、2011年5月