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人生100年時代はとっくに来ていた?『後漢書』が伝える古代日本人の長寿っぷり

伝承民俗
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栄養状態や医療環境の改善によって「人生100年時代」が目前(あるいは既にそうなっている)と言われている今日この頃。

日本人の平均寿命は昭和25年(1950年)から平成22年(2010年)までの60年間で大幅に上昇、女性は61.5歳から86.39歳、男性は58.0歳から79.64歳と実に20年以上も長くなっています(※厚生労働省などの統計データによる)。

それでも、いざ100歳となると身の回りにそこまで多い訳ではなく、正直「そんなに長生き出来ないでしょ」と思う方も少なくないでしょう。

「歳?百を過ぎてからは、数えんようにしとる」

しかし、歴史を繙(ひもと)いてみると古代日本では100歳以上の高齢者もそう珍しくはなかったようで、そのことが古代中国(後漢王朝)の歴史書『後漢書(ごかんじょ)』に記録されています。

もし本当なら、彼らはどんな暮らしをしていたのでしょうか。

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寿考多く、百余歳に至る者はなはだ衆し

さて、まずは「本当に100歳以上の高齢者が多かったのか」を確認してみましょう。

……俗皆徒跣以蹲踞爲恭敬 人性嗜酒 多壽考至百餘歳者甚衆……

※『後漢書』東夷伝 倭より。以下同じ

【意訳・太字部】寿命は永く(寿考多く)、百歳以上生きる者ははなはだ多(衆)い

栄養・衛生面から短命な者(例えば生まれてすぐ死ぬ赤ん坊など)が多かった筈なので平均寿命は短いものの、特に問題がなければ(あるいは幸運に恵まれれば)100年以上にわたって長生きできたようです。

一説によれば、古代日本では現代の1年を2年とカウントしていた(例えば二毛作を採用し、作物の収穫サイクルを1年としていた?)などという説も。しかし根拠となる裏づけが薄いため、ここでは現代の暦とおおむね同じとします。

狭いながらも、楽しい我が家(イメージ)

そんな彼らがどんな暮らしをしていたかについて『後漢書』をすべて紹介するのは流石に冗長すぎるため、ここでは健康の基本となる食生活についてピックアップしましょう。

……冬夏生菜茹 無牛馬虎豹羊鵲……

【意訳】冬、夏に採取した(生じた)菜をゆでて食べる。牛や馬、虎や豹、羊や鵲(かささぎ)はいないため、それらの肉を食べることはない

……父母兄弟異處 唯會同男女無別 飲食以手而用籩豆……

【意訳】家族はそれぞれの居場所を持つが、団欒の時は男女を区別しない。料理は手づかみで食べ、盛りつけは籩豆(へんとう)を用いる

※籩は野菜や果実などを盛る竹の器、豆は肉などを盛る木の器を言います。

こうして見ると、あえて「無牛馬虎豹羊鵲」と書きつつ、代わりの肉=鳥獣や魚などを挙げていません。なので基本的に菜食(肉や魚はたまに食べる程度)だったのでしょう。

また「父母兄弟異處 唯會同男女無別」とあります。これは家族それぞれのパーソナルスペースを確保しながら、団欒の時はみんなで集まるほどよい距離感、密すぎず疎すぎもしないソーシャルディスタンスが保たれていたようです。

菜食メインで身体に優しく、心地よい距離感で精神衛生も保たれるストレスフリーな生活環境だったからこそ、古代日本は長寿大国だったのかも知れませんね。

のびのび長寿?古代日本の天皇陛下たち

そのお陰なのか、古代の天皇陛下もやたらと長命な方が多く記録されています。

初代・神武天皇 庚午年(紀元前711年)~神武天皇76年(紀元前585年)127歳
第2代・綏靖天皇 神武29年(前632年)~綏靖33年(前549年)84歳
第3代・安寧天皇 綏靖5年(前577年)~安寧38年(前511年)67歳
第4代・懿徳天皇 綏靖29年(前553年)~懿徳34年(前477年)77歳
第5代・孝昭天皇 懿徳5年(前506年)~孝昭83年(前393年)113歳
第6代・孝安天皇 孝昭49年(前427年)~孝安102年(前291年)137歳
第7代・孝霊天皇 孝安51年(前342年)~孝霊76年(前215年)128歳
第8代・孝元天皇 孝霊18年(前273年)~孝元57年(前158年)116歳
第9代・開化天皇 孝元7年(前208年)~開化60年(前98年)115歳
第10代・崇神天皇 開化9年(紀元前149年)~崇神68年(紀元前30年)120歳
※『日本書紀』による

……現代の基準からすると、流石にちょっとあり得ない長寿ぶり。これを根拠に「古代の天皇陛下はフィクションだ」とする声もあります。しかし100歳以上の国民がはなはだしく多い状態であれば、こうした長寿も現実味を帯びてきそうです。

67歳で崩御された第3代・安寧天皇。現代ならそこまで短命でもありませんが……。

「むしろ、現代人が不健康すぎるのでは……?」

そ、そんな事は多分ないと信じたいところですが(全体的な平均寿命の底上げは出来ていることですし)、誰もが健康で幸せに長生きできる社会を目指していきたいですね。

※参考文献:

  • 吉川忠夫『読書雑志 中国の史書と宗教をめぐる十二章』岩波書店、2010年1月
  • 石原道博『新訂 魏志倭人伝・後漢書倭伝 宋書倭国伝・隋書倭国伝 中国正史日本伝(1)』岩波文庫、1985年5月
  • 安本美典『大和朝廷の起源』勉誠出版、2005年7月
  • 井上光貞『日本の歴史1 神話から歴史へ』中公新書、2005年6月

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