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【競勢酔虎傳】新政府軍に徹底抗戦?戊辰戦争で活躍?大河兵次郎の武勇伝

幕末維新
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幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師・大蘇芳年(たいそ よしとし。月岡芳年)。その躍動感あふれる筆致から、100年以上の歳月を越えて多くのファンに愛されています。

そんな芳年の手がけた人気シリーズ「競勢酔虎傳(けいせい すいこでん)」は、幕末・戊辰戦争を舞台に無名の勇士たちを描き出しました。

今回はそんな一人、大河兵次郎(おおかわ ひょうじろう)を紹介。果たして彼は、どんな活躍を魅せたのでしょうか。

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大河兵次郎は実在?それとも架空の人物?

まずは大河兵次郎という人物について調べましたが、詳しいことは分かっていません。そのため、架空の人物説もあるようです。

※当時、旧幕府軍の人物を賞賛するような表現活動を行うと、何かと不都合があったのかも知れません。そのため、あえて架空の人物に託した可能性も考えられます。

とりあえず今回は大河兵次郎が実在したという前提で、絵や評伝を考察してまいりましょう。

絵画を見ると、大河兵次郎が仲間たちと麦畑の中に潜み、銃を構えているのが分かります。銃の構造を見ると火縄銃ではなく、燧石(火打石)で点火するフリントロック式のようです。

兵次郎の武装は鎖帷子に黄緑の腹巻を当て、布製と思われる黒い草摺(大腿部防具)を垂らし、足ごしらえというシンプルないでたち。そして時代がかった太刀を佩き、脇差を指しています。

仲間たちも銃は同じくフリントロック式、いかにも幕末感あふれるいでたちですね。最奥(白鉢巻)の人物は銃先に着剣(銃剣を装着)していることから、一斉射撃の後に突入するつもりでしょう。兵次郎も抜刀して敵中へ躍りかかるようです。

虎視眈々と敵陣を見据える兵次郎の息づかいは荒ぶっているのか、それとも意外に冷静なのか……そんな緊迫感が伝わって来ますね。

評伝と用語解説から読み解く、大河兵次郎の武勇伝

さて、絵画自体の観賞はこれくらいにして、書き添えられた評伝を読んでみましょう。

競勢酔虎傳 大河兵次郎(おほかは へうじろう)

杜鵑(ほととぎす)啼(なく)麥(むぎ)の秋。故郷を幸手(さって)栗橋(くりはし)辺(へん)。敵(かたき)の中田(なかだ)古河(こが)くれて。憂苦をし野木(のぎ)血戦(けっせん)なし。身をバ蓑着(みのぎ)の捨松(すてまつ)と。覚悟のうへを慢田宿(まくだじゅく)。往昔(むかし)小山(をやま)の判官(ほうがん)が城跡なりと聞えたる敵の野営に朝がけして。四隣(しりん)の睡眠(ねむり)を覚(さま)させたり

轉々堂鈍々記(てんてんどうどんどん しるす)

※大蘇芳年「競勢酔虎傳 大河兵次郎」

戊辰戦争当時に使用された銃器(画像:Wikipedia)

【用語解説】

  • 杜鵑:主に5月中旬から6月中旬にかけ、テッペンカケタカと啼く鳥。
  • 麦秋:5月下旬から6月上旬にかけて。麦が実る季節を秋と見なす。
  • 幸手:埼玉県幸手市。故郷を「去って」にかける。
  • 栗橋:埼玉県久喜市(旧栗橋町)。戦に「繰り出し」にかけたか。
  • 中田:日光街道の宿場。茨城県古河市中田。「敵の中だ」にかける。
  • 古河:日光街道の宿場。茨城県古河市。「木隠れて」にかける。
  • 野木:日光街道の宿場。栃木県下都賀郡野木町。「凌ぎ(しのぎ)」にかける。
  • 蓑着の捨松:語呂合わせ。「身(命)を捨てる」にかける。
  • 慢田宿:不詳。間々田宿(ままだしゅく。栃木県小山市)の誤記?「ままよ(自身の運を天に委ねる)」にかけたか。
  • 小山判官:小山秀朝。鎌倉末期から南北朝時代に活躍した武将。
  • 四隣:四方の隣。転じて敵に包囲されている状況か。
  • 轉々堂鈍々:不詳。今回限りのペンネームと思われる。各地を転戦し、鉄砲をドンドン撃ち出す意味か。

以上の評伝から、大河兵次郎に関する仮説をまとめてみましょう。

  • 5月から6月(ホトトギスが鳴く麦秋)に挙兵し、故郷の幸手を出発した。
  • 日光街道を中心に各地を転戦。敵中に潜伏して、野木の地で血戦を繰り広げる。
  • 身を捨てる覚悟で(かつて小山判官の居城があった)間々田宿へ進む。
  • そして早朝に敵陣へ奇襲をかけた。

果たして大河兵次郎らはどうなってしまったのでしょうか。恐らく戦場の華と散ったものと思われます。

終わりに

今回は幕末に活躍した?大河兵次郎について、大蘇芳年の錦絵を紹介してきました。

果たして彼が実在していたのかどうかは、今後の究明がまたれます。

しかし仮に架空の人物であったとしても、芳年がこうした志士たちの生き様を後世に伝えたかったのは確かでしょう。

大河兵次郎のモデルとなった人物やエピソードについても、気になりますね。

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