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【歴史旅】カッパ淵、常堅寺、阿部屋敷…『遠野物語』河童スポットめぐり

歴史旅
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【註】取材情報は令和元年(2019年)8月時点のものです。施設の営業時間など変更されている場合もあるため、ご来訪に際しては事前にご確認願います。

かつては日本全国の沼や川に棲息していたと伝わる河童(かっぱ)ですが、今ではすっかりその姿を見なくなってしまいました。

全国各地に残る河童伝承。今もまだ、彼らは棲んでいるのでしょうか。

しかし、今でも河童が棲むという川が岩手県遠野市にあり、往時の様子が柳田国男『遠野物語』に記されています。

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遠野の川童は面の色赭きなり……カッパ淵、阿部屋敷、常堅寺

五七 川の岸の砂の上には川童の足跡というものを見ること決して珍しからず。雨の日の翌日などはことにこの事あり。猿の脚と同じく親指は離れて人間の手の跡に似たり。長さは三寸に足らず。指先のあとは人ののように明らかには見えずという。

【意訳】川原の砂には、よく河童の足跡がついている。雨が降った翌日などは特に多い。猿の様に親指だけ離れて人間の手形のようである。長さは10センチ足らず、指先で地面を踏みしめることはないという。

五八 (前略)ある日淵へ馬を冷しに行き、馬曳の子は外へ遊びに行きし間に、川童出でてその馬を引き込まんとし、かえりて馬に引きずられて厩の前に来たり、馬槽(うまふね)に覆われてありき。家のもの馬槽の伏せてあるを怪しみて少しあけて見れば川童の手出でたり。村中のもの集まりて殺さんか宥さんかと評議せしが、結局今後は村中の馬に悪戯をせぬという堅き約束をさせてこれを放したり。(後略)

【意訳】ある日、川原に馬をつないでいたところ、河童が出てきて水中へ引きずり込もうとしたが、逆に馬に引きずられて馬小屋の前まで来てしまった。

河童。鳥山石燕『画図百鬼夜行』より

河童は飼い葉桶をひっくり返した中に隠れていたがすぐに見つかって捕らえられ、村中総出で殺すか許すか相談した結果、今後は悪戯をしない条件で解放してやったのだった。

五九 外の地にては川童の顔は青しというようなれど、遠野の川童は面(つら)の色赭(あか)きなり。佐々木氏の曾祖母、穉(おさな)かりしころ友だちと庭にて遊びてありしに、三本ばかりある胡桃の木の間より、真赤なる顔したる男の子の顔見えたり。これは川童なりしとなり。(後略)

【意訳】よその河童は緑色らしいが、遠野の河童は赤い顔をしている。佐々木君(説話の語り手)の曾祖母が幼いころ、友達と庭で遊んでいると真っ赤な顔の男の子が現れた。これが河童だという。

……とまぁこんな具合に河童エピソードの豊富な遠野ですが、特に河童で有名なのが土淵町の常堅寺(じょうけんじ。別名カッパ寺)裏手に流れるカッパ淵

遠野伝承園から徒歩3~5分、食事をとった腹ごなしに歩くのにちょうどよさそうな場所にあります。

カッパ淵。あの茂みの奥から、こっちを見ているかも?

ここは恐らく全国で唯一?河童の捕獲が許可されており、遠野市観光協会の発行する「カッパ捕獲許可証(税込み220円、有効期限1年間)」を購入すれば、いつでも河童を獲ることが可能です。

で、許可はとったものの、カッパなんてどうやって獲るのかと言えば素手ではもちろん自前で道具を用意する必要もなく、現地で釣り竿(河童の好物キュウリ付き)を100円でレンタルしてくれるので、許可証を見せればカッパ獲りにチャレンジできます。

まぁ「そんなモン獲ってどうするんだ。食えるわけでもなかろうし」と思って買いませんでしたが、野生動物はなるべくそっとしておきたいところ。

それよりもここ現地に来てみると、いかにも河童が出そうな風情を味わうのがおすすめです。静かな林に包まれたせせらぎの薄暗い茂みの陰とか、時おり木漏れ日を反射して輝くやさしい水の流れとか……。

また、カッパ淵のすぐ近くに阿部屋敷(別名:屯館-とんだて)があり、平安時代後期の天喜・康平年間(1050年ごろ)に建てられた豪族・安倍氏の屋敷跡と伝わっています。

一見、単なる畑にしか見えないが……阿部(安倍)屋敷にて。

【案内板】

陸奥六郡に威勢を誇った安倍氏の一族が、天喜・康平のこと(紀元1050年ごろ)から構えた屋敷で、豪壮な直屋(すごや)の母屋には数十名の家族がすみ、土塁と堀とでかこまれていました。八幡座館(はちまんざだて)の八幡太郎(源義家)の軍と小烏瀬川をはさんで矢をうちあったと伝える的場跡もあります。

かつての栄華を伝えるものは残っていないようでしたが、この一帯を中心に奥州六郡の覇者・安倍貞任(あべ さだとう)らが暴れ回っていたと思うと、一見の甲斐はあるでしょう。

幼き日の貞任少年も、この辺りで河童と戯れて?いたのかも知れませんね。

また、カッパ寺こと常堅寺も素通りしないでお参りしましょう。

常堅寺の山門。

室町時代の延徳2年(1490年)に創建されたとされるこの寺にも河童にまつわるエピソードがあり、かつてここの住職が河童を助けたところ、その恩返しとして火災が起きた時、裏手の淵から水を汲んで火を消し止めてくれたそうです。

常堅寺のカッパ狛犬。凹んだところにはお賽銭を入れたくなるのは、日本人の習性でしょうか。

いわば河童の恩返し、境内の名物ともなっているカッパ狛犬は、今もお寺を守護してくれているのでしょう。

終わりに

とまぁこんな具合に楽しめる遠野の河童スポットですが、公共交通機関を使うのはバス本数が少なくて不便なため、移動には自動車を使うのがおすすめ。

純粋にドライブ自体が楽しい(撮影:妻)

もちろん自家用車でもいいものの、遠野から他の街へ出るのが面倒なため、もし遠野観光に集中するならレンタカーが便利でしょう(依頼すれば、指定場所まで持ってきてくれます。返却はお店でしたが、その場合は遠野駅まで送ってくれます)。

健脚な方であれば、遠野駅からレンタサイクルを借りて思いっきり走るのも楽しそうですね。

今はコロナ自粛でなかなか遠方へ遊びにはいけませんが、遠野へ遊びにいくなら、是非とも足を運んでほしいと思います。

【アクセス】

遠野駅から6km
車なら約11分+徒歩3~5分
自転車なら約40分
※駐車場は伝承園のが利用可能です。

個人的レビュー

滞在時間:カッパ淵、阿部屋敷、常堅寺の全体で30分~(伝承園の補足的な感覚で)

おすすめ度:★★★★☆(風情を味わいたい方向け)

適した季節:夏≧秋(ちょっと肌寒いかも)>春(まだ寒い)>冬(寒い)

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