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【歴史旅】鎌倉市今泉「炭焼き仏(摩崖仏)」の伝承と、暮らしに根ざした信仰をたどる

伝承民俗
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七久保橋から今泉不動尊に向けて道なりに進むことおよそ100メートル。左手の崖にそって脇道へ入ると、電柱の先に崖を穿った「やぐら」がいくつも出現します。

「やぐら」とはかつて貴人や僧侶などを祀ったと伝わる鎌倉地域の習俗で、時代が下るにつれて倉庫や防空壕としても使われるようになりました。

筆者撮影(平成25・2013年5月)

最も手前の「やぐら」を見ると、左上に崖を円形に穿った模様が見えます。丸の中には人のシルエットを思わせる浮き彫りがあり、これは摩崖仏(まがいぶつ。崖を彫って造る仏像)の一種でしょう。

摩崖仏を拡大。筆者撮影(平成25・2013年5月)

興味深く観察していたら、近くを通りがかった地元女性が、こちらの摩崖仏「炭焼き仏」の言い伝えを教えてくださいました。

※今回は平成25年(2013年)5月の調査報告をリライトしたものです。

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山崩れで亡くなった炭焼きの菩提を弔う

今は昔し、この辺りは炭焼きをする家が多く、焼いた炭をやぐらに保管していました。

昭和20年代(1945~1954年)ごろ、ここで山崩れが起きて、最も手前のやぐらを使っていた炭焼きの方が亡くなってしまったそうです。

それで亡くなった方の菩提を弔うため、崖を彫って仏様を造ったと言いますが、残念ながら具体的な仏様の種類までは分かりませんでした。

現代では仏様のシルエットだけが残っており、頭と肩の比率から座像に見えますが、デフォルメされた立像の可能性もあります。

ちなみに摩崖仏の左下には道祖神と石塔の頭が収められ、道行く人々を見守っていました。

暮らしに根ざした信仰をたどる

お年寄りたちから地元の伝承を聞き集めているという女性は「鎌倉というと、みんな八幡様や大仏などの表舞台ばかり注目するけれど、こうした暮らしに根ざした信仰の価値に気づける豊かさを取り戻してほしい」とコメント。実に共感します。

なおこの山の裏にはお稲荷様が祀られているので、お時間が許す方は一緒にお参りされるのもいいでしょう。女性の話では山の神も祀られているとのことでしたが、お稲荷様と合祀されているのか、別にあるのかは分かりません。

またすぐ近くに松竹撮影所の関係者からも崇敬されたという子神社(ねのじんじゃ)があり、こちらは「腰から下の痛み(社伝より)」にご利益があると言います。

大船駅から歩くと約30分とかなり大変ですが、近くまでバスが出ているので、少しディープな鎌倉を味わいたい方向けにおすすめのスポットです。

鎌倉市今泉 炭焼き仏(摩崖仏)

  • 拝観:24時間365日
  • 拝観料:無料
  • 御朱印:なし
  • 創始:昭和20年代(1945~1954年)ごろ
  • 仏師:不詳(地元民?)
  • 仏像:不詳(座像?立像?)
  • 供養:地元の炭焼き(山崩れで被災死)
  • 交通:JR大船駅から徒歩約30分
  • 大船駅からバス停「今泉」から徒歩2~3分

近隣の史跡

  • 子神社
  • 稲荷社(裏手の山。山の神も?)
  • 旧栄泉寺墓地(稲荷社の上)
  • 白山神社(今泉不動尊方面へ徒歩5~10分)
  • 称名寺(今泉不動尊。徒歩10~15分)
  • 大船熊野神社(徒歩7~12分) など
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