絶賛放送中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。その第13回「幼なじみの絆」ではついに木曾義仲(演:青木崇高)が本格始動。
第1回「大いなる小競り合い」の終盤にちょっと言及されて以来なので、心待ちにしていたファンの方も少なくないでしょう。
色黒な顔や、燃え上がる炎のようなもみあげなど、そのワイルドなビジュアルが印象的。
多くの視聴者がイメージしているであろう義仲そのものですね。
京都の公家たちから嫌われた義仲のガサツぶり
義仲は京都から平家を追い出し、上洛一番乗りを果たしたものの、田舎育ちの粗暴さから公家たちから嫌われてしまいます。
猫間中納言(猫間は居住地名)こと藤原光隆(ふじわらの みつたか)や、鼓判官(鼓の名手だった)こと平知康(たいらの ともやす)をバカにしたエピソードは有名ですね。
猫間中納言こと藤原光隆に対しては……
「猫間だと?猫が人間様に何の用だ(笑)」
「(飯の汚さに辟易する光隆に対して)猫のくせに猫下ろし(残飯を猫にやること、転じてお残し)をするとは生意気な。猫らしくがっついて食えよ!」
※『平家物語』より(意訳)
また、鼓判官こと平知康に対しては……
「お前(知康)が鼓判官と呼ばれるのは、みんなから殴られたのか?張られた(ビンタされた)のか?」
「お前をブン殴ったら、どんなにいい音がするんだろうなぁ!」
※『平家物語』より(意訳)
などなど、両名が義仲のガサツな態度にうんざりしたのは言うまでもないでしょう。
ほかにも少なからぬ都人らが、義仲の被害?に遭ったものと思われます。
いくら平家追討の英雄とは言え、武力だけで京都の政界を生き抜くことはままなりません。
果たして愛想を尽かされた義仲は、鎌倉より攻めてきた源範頼(のりより)・源義経(よしつね)らに滅ぼされてしまうのでした。
そんな義仲ですから、多くの方が「木曾の山猿」感あふれるビジュアルを想像するのは無理からぬところでしょう。
実際、義仲が登場する作品では、たいてい粗野な態度にふさわしい?ワイルドな外見に描写されています。
しかし、実際はどうだったのでしょうか。
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磨けば光るタイプだった?『源平盛衰記』が伝える義仲のイケメンぶり
「眉目形はきよげにて美男なりけれども、堅固の田舎人にて、あさましく頑なにおかしかりけり」
【意訳】目鼻立ちの爽やかな美男子だが、なにぶん頑固な田舎者。考えなしの振る舞いが目立つ。
「色白う眉目は好い男にて有りけれども立ち居振る舞いの無骨さ、言いたる詞続きの頑ななる事限りなし」
【意訳】色白で目鼻立ちの整った男であるが、立ち居振る舞いは垢抜けず、言葉もたどたどしく、聞き苦しいことこの上ない。
※『源平盛衰記』より
……これらの記述は『源平盛衰記』によるもの。どうやら義仲は粗野な振舞いとは似合わない美男子だったようです。
いわゆる「磨けば光る」タイプで、誠にもったいない限り。
とは言うものの、いざ磨いたら磨いたで頼朝には脅威となるため、遠からず狙われたことでしょう。
それとも公家たちを味方につけて中央の政治基盤を固め、頼朝を凌駕する存在になれたでしょうか。
いや、付け焼き刃ではすぐにメッキも剥げてしまい、遅かれ早かれ同じ運命をたどったものと思われます。
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終わりに
粗野な振る舞いに似合わず、意外と美男子だった木曽義仲。彼は2歳で父を喪い、故郷を追われて信濃の山中へ匿われました。
そのまま永らく外界を知らずに成長し、にわかに歴史の表舞台へ踊り出したことが、義仲にとって悲劇のはじまりとなったのでした。
もし義仲が早くから都との交流を通じ、文武両道を兼ね備えていたとしたら……眉目秀麗の名将として、日本の歴史を大きく変えていたかも知れませんね。
※参考文献:
- 鈴木彰ら編『木曾義仲のすべて』新人物往来社、2008年12月
- 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全読本』産経新聞出版、2022年1月
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