天正3年(1575年)5月21日、徳川家康(とくがわ いえやす)と織田信長(おだ のぶなが)が、武田勝頼(たけだ かつより)の軍勢を撃退した長篠の戦い(設楽原の戦い)。
迫り来る甲州の騎馬軍団を、大量の火縄銃で一斉掃射した場面はあまりにも有名ですね。
当時の火縄銃は弾薬(弾丸と火薬)を銃口から込める先込め式で、一発撃つと次弾の装填に時間(平均20〜30秒)がかかりました。
この問題を解決?したとされるのが『甫庵信長記』に登場する三段撃ち。
三人一組が順番に撃つことで発砲間隔を短縮する、画期的な戦法……とこれまで紹介されてきました。
しかし、実際のところはどうなのでしょうか。
そこで今回は従来の三段撃ちと、新説「先着順自由射撃(※)」について紹介したいと思います。
(※)中には先着順自由「連射」という表現も散見されますが、火縄銃自体が連射できる訳ではないため、ここでは「先着順自由射撃」に統一しました(~連射、の方が発音もカッコいいですけどね)。
理論的には行けそうだけど……「三段撃ち」とは
まずは従来の三段撃ちから。
(1)鉄砲を持った兵士(以下、鉄砲足軽)を三人一組を編成。
(2)敵の方角に向けて縦列に並べ、最前列の者が発砲次第、最後列へ下がる。
(3)二番目の者が最前列へ出て発砲、(2)と同様に下がる。
(4)三番目も同様に発砲し、最後列へ下がって最初の者が再び最前列へ。
……という繰り返しにより、発砲間隔を大幅に短縮できるという塩梅です。
こう聞くと、理論的には約30秒の発砲間隔を、1/3の約10秒ほどに出来そうですよね。
しかし、いざやってみるとなかなかそうも行きません。
当たり前と言えば当たり前ですが、火縄銃の装填は習熟練度によってかかる時間が異なります。
誰か一人がもたつくと、それだけでその列は発砲が止まってしまうのです。
しかも全列一斉射撃であった場合、その一列を待たねばならず、その間は一発も撃てなくなります。
「放てー!」ダダダダーン!……という一斉射撃は確かにかっこいいのですが、それに固執するのはあまり得策ではなさそうです。
これを解消するのが次に紹介する「先着順自由射撃」となります。
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一方「先着順自由射撃(先着順自由連射)」とは
(1)事前に射列(射撃ゲートのようなイメージ)を決めておくが、誰がどの列に入ってもよい(列外から勝手に撃ってはならない)。
(2)射列に入ったら適宜発砲、速やかに後方へ下がる。
(3)空いた射列に装填完了者が入り、次弾を発砲する。
(4)発砲しだい速やかに後方へ下がり、次の装填完了者が入り……の繰り返し。
これだと遅い者に引きずられず、素早い者から次々に射撃することが可能となります。
一斉射撃でこそなくても、当時としては十分な弾幕を張って武田の騎馬軍団を圧倒できたことでしょう。
実際、このように撃っていたかは史料の明記がないため考察の域を出ませんが、三段撃ちよりは実用性がありそうですね。
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終わりに
とは言え、この「先着順自由射撃」にもデメリットがないわけではありません。
各個が自由に動くため、ぶつかって怪我をするくらいならまだマシで、下手をすれば衝撃による暴発事故も考えられます。
三段撃ちしかり「先着順自由射撃」しかり、円滑かつ安全的確な作戦行動を実現するため、十分な演練を要することは言うまでもありませんね。
果たしてNHK大河ドラマ「どうする家康」で採用されるのは、三段撃ちか「先着順自由射撃」か、あるいはもっと奇想天外な秘策が繰り出されるのか……。
皆さんは、どう思われますか?楽しみですね!
※参考:
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