吉野(奈良県吉野町)と言えば桜の名所。一目千本(吉水神社)をはじめ、一生に一度は見ておきたい満開の桜で知られ、世界各国から多くの人が訪れる人気の観光地です。
そんな吉野の名物として、葛(くず)を挙げる方も多いでしょう。今回は本場の吉野本葛を使った葛餅(くずもち)と葛切(くずきり)を堪能してきたので、その様子を紹介したいと思います。
そもそも葛とは何?
葛餅や葛切は聞いたことがあるけど、それ以前に葛とは何?という方もいらっしゃるでしょう。

葛はマメ科の植物で、脅威的な繁殖力からそこら中に生えています。ふだん意識していなくても、写真を見れば、どこかで目にした記憶が蘇るはずです。
葛餅や葛切は、この葛の根っこから抽出したデンプンを粉にした葛粉(くずこ)と水だけを混ぜて作ります。
葛の根を見ると、まるで丸太のようで、これが葛餅や葛切になるとは俄かに信じがたいですね。
葛餅と葛切の違いは?
既にご存知の方も多いと思いますが、葛餅と葛切の違いについても確認しておきましょう。

葛餅とはその名の通り、葛粉を水に溶いたものを加熱して固め、透明になったところで餅状に加工して食べるものです。
葛切とは基本的に葛餅と同じ作り方で、板状かつ透明に固まったものを麺状に切って食べます。

それぞれ食感が異なるため、食べ比べると楽しいですよ。
ちなみに材料は先ほど紹介したとおり、葛餅も葛切も基本的には葛粉と水だけで作ります(両者の配分は、店によって異なるとか)。
片栗粉のように混ざり合わない性質を持っている葛粉と水が、加熱することによって一体化し、かつ透明になるのです。
店頭で実演してくれるところもあるので、機会があったらぜひ見学してみてください。
※実際に食べるためには予約するのがおすすめですが、作り方の実演を見るだけなら、タイミングによってはのぞき込めるかも知れません。
葛餅と葛切の作り方
葛餅と葛切を自宅でも作ってみたい!という方のために、葛餅と葛切の作り方を教わってきました(みんなに惜しみなく教えてくれます)。
まずは葛餅の作り方から。

葛粉と水を混ぜたものを鍋で熱しながら練り上げていくと、真っ白だった水が次第に白濁。やがて透明になり、粘ってきます。
頃合いを見て火から下ろし、湯に沈めて餅状に丸めれば完成です。
続いて葛切の作り方を。


葛粉と水をを混ぜたものを型に流し込んで湯煎にかけ、ある程度固まったところで湯に沈めます(最初から沈めると中身が湯にとけるので注意)。
中身が透明になったら湯の中で型から取り出し、麺状に切れば出来上がりです。
……と、こうして説明するのは簡単ですが、実際に作るのは躊躇してしまうかも知れません。
特に実演を見学していると、何というか自分でできる気がしないのです。これはご主人も言っていました。
でも、理屈を知っていれば道具などは代用できるはずなので、チャレンジしてみたい気もしますね。
葛餅と葛切の食べ方

こうして完成した葛餅と葛切の消費期限は、たったの10分。
それ以上放置すると、熱によって結合していた葛粉と水が分離してしまうのだそうです。
透き通っていた葛餅と葛切が、次第に白濁・分離していく様子を観察するのも一興かも知れませんが、やはり美味しい状態で食べた方がいいでしょう。
味つけは基本的には自由ですが、今回は葛餅は黒蜜&黄粉、葛切はポン酢醤油でいただきました。お店によって個性が出るところでもあるため、出されるものを試してみてください。
なお最初の一口だけは、葛餅も葛切もそのまま食べてみて欲しいです。砂糖や甘味料は一切入っていませんが、ちゃんと葛本来の甘さが伝わりました。
ちなみに真夏であっても、葛餅と葛切は温かい状態で提供するそうです。

暑い夏は冷たい状態で食べたい気持ちもわかりますが、まずは本場吉野で本物の葛を堪能してみてほしいと思います。
だから葛餅や葛切を食べに行くなら、夏は避けた方がいいかも知れませんね。
吉野本葛と吉野葛の違い

ちなみに葛餅と葛切に使う葛粉には、吉野本葛(よしのほんくず)と吉野葛(よしのくず)、そして単なる葛の三種類があります。
それぞれ定義があるので、まとめてみましょう。
- 吉野本葛:吉野産の葛粉を100%使用(一切の混ぜ物なし)。
- 吉野葛:吉野産の葛粉を50%以上使用(混ぜ物は50%未満)。
- 葛:吉野産の葛粉使用が50%未満(混ぜ物の方が多い状態)。
吉野の地名を冠するには、吉野産の葛粉を半分以上使うようルールが定められているそうです。
今後葛餅などを購入する時は、成分表示を見てみたいと思います。
終わりに

今回は吉野名物の葛餅と葛切について、教わってきたことを紹介させていただきました。
これまで何げなく食べていて、何となく「うすら甘く透明な食べ物」程度の認識でしたが、改めてその魅力に感じ入ります。
吉野に行ったらぜひ一度は食べてみたい吉野の葛餅や葛切。なかなか吉野まで行けない方も、吉野本葛や吉野葛を取り寄せて、自宅でチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
※参考: