茅子(渡辺早織)「公任様が凛々しくて……やはり私は公任様だわ。ねっ」
※NHK大河ドラマ「光る君へ」第8回放送「招かれざる者」より
しをり(佐々木史帆)「え?道長様ではないの?あの日は何と言っても道長様でしょう」
茅子「公任様よ」
今日も今日とて恋の花が咲き乱れる、春爛漫な源倫子(黒木華)サロン。年頃の女性たちが楽しそうにしているのは、遠目に見ていて嬉しいものですね。
さて、藤原公任(町田啓太)に熱中していた茅子。彼女にはモデルがいるのでしょうか。
貴族の姫
茅子(かやこ)
渡辺 早織(わたなべ・さおり)源倫子のサロンに通う貴族の姫。
※NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイト(人物紹介)より
恐らくは”しをり”ともども創作キャラなのだと思います。
でも、もしかしたら。どんな形であれ、彼女の想いが実っていないとも限りません。
という訳で、今回は茅子が藤原公任と結ばれた≒子供を生んだ可能性について、ちょっと強引に考えてみましょう!
名前以外ほとんど謎……藤原公任の子供たち
まず、藤原公任について系図集『尊卑分脈』を見てみましょう。
子供たちが複数いる中で、生母の分からない者が2人いました。
1人は男子で、名を任入。もう1人は女子で、名前は不詳。それぞれの記述を見てみます。
山
任入
母女子
※『新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集 第5巻』より
母
二人とも、名前以外はほとんど謎のようです。
実際の記述はタテ書きなので、上の行は名前の右、下の行(母親の欄)は名前の左になります。
女子は名前も母親も不明、これ以上のヒントはありません。
なのでここでは藤原任入について、可能な限り考察していきましょう。
藤原任入とは何者か
母親は不明、ただ一文字「山」とだけ註釈の入っている藤原任入。この極めて限られたヒントを手がかりに、その人物像に迫っていきます。
まず、山とは何を意味しているのでしょうか?
(1)入山=出家した僧侶?
(2)山城守?それなら任官記録があるはず
(3)住んだ地名?さすがに山一文字じゃ分からない
(4)もしかして幼名?人間でない名前をつけたことで、魔物に憑かれるのを避けた?
他に考えつきません。これらの可能性から、恐らく出家したものと考えられます。
仮に出家していなくても、れっきとした身分を得られていないのは間違いないでしょう。
(ご存知の方がいらしたら、ご教示ください)
名前の読みは藤原任入(とういり/にんじゅ)?
続いて名前の任入について、その読みも考えてみます。
藤原公任(きんとう)の子で任入ですから、任の字は恐らく「とう」でしょう。
でも出家しているなら、音読みの「にん」「じん」もありですね。
続いて入の字。これは「にゅう」「じゅ」「いり(いる)」「しお(一入)」などが考えられます。
以上を組み合わせると、藤原任入はこんな読み方に。
【ありそう】 とうにゅう?とうじゅ?とういり?とういる?にんじゅ?じんにゅう?じんじゅ? 【なさそう】 にんにゅう?にんいり?にんいる?じんいり?じんいる?
出家した可能性も考えつつ、音の収まり(筆者の主観)から、今回に限っては彼を藤原任入(とういり/にんじゅ)とします。
藤原任入の生没年は結局不明
ここまで来ると、もうあまり突き詰められる要素がありません。
最後に藤原任入について、生年の可能性を可能な限り考察してみましょう。
父親である藤原公任は康保3年(966年)生まれ。藤原道長と同い年ですね。
一般的に子供を授かる年齢が20~40歳とすると、藤原任入は寛和2年(986年)から寛弘3年(1006年)の間に生まれたと考えられるでしょう。
ちなみに公任の長男である藤原定頼(さだより)が長徳元年(995年)に生まれました。
そのため、任入を弟とした場合、それ以降の誕生と考えられます。
もちろん異母兄弟のため、それより前に誕生したが、元服の順番が前後した可能性もなくはありません。
中世の兄弟序列は元服順で前後することもありました。
でも、ここでは仮に定頼の後に生まれたものと仮定しましょう。
そして任入という名前がある以上、少なくとも元服or出家するまでは生きていたことが分かります。
名前の分からない姉妹ともども、幸せに生きて欲しいですね。
終わりに・茅子は藤原任入の母?
【藤原任入・基本データ】
生没年 | 不詳(長徳元・995年以降生~没年不詳と仮定) |
幼 名 | 山? |
両 親 | 父親:藤原公任/母親:不詳(茅子のモデル?) |
兄 弟 | 女子(同母?)・藤原定頼(嫡男)・良海(出家)・女子(藤原教通正室)・女子(藤原遵子養女) |
読 み | 「とういり」?出家後「にんじゅ」? |
職 業 | 僧侶? |
以上、「光る君へ」に登場した茅子のモデルについて、可能な限り(かなり強引に)考察してきました。
結局、彼女自身については何も分からず、もしかしたら藤原任入(と、もう一人の娘)の母親になったかも知れないという強引な想像に落ち着いたのみ。
仮に公任への想いが成就したところで、その関係を公にはできなかったのでした。
果たして茅子は今後活躍するのでしょうか。これからも見守っていきましょう!
※参考文献:
- 藤原公定 撰『新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集』国立国会図書館デジタルコレクション
コメント