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欲しいのはカネか、仕事か?『西郷南洲遺訓』が伝える西郷隆盛の心意気

明治時代
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皆さん、お仕事はされていますか?されているとしたら、何のためにされていますか?

仕事をする理由は人によってそれぞれ違うと思いますが、多くの方は「おカネを稼ぐため」に働いていると思います。

では、もしも「おカネが欲しいなら、欲しいだけあげるよ」と言われたら、それでも皆さんは仕事をしますか?

よく「宝くじが当たったら、絶対に今の職場を辞めてやるんだ!」なんて話を聞きますが、皆さんだったらどうでしょう。

肥後直熊「西郷隆盛像」

さて、今回紹介するのは明治時代、維新三傑の一人として名高い薩摩の偉人・西郷隆盛(さいごう たかもり)のエピソード。

西郷どんの仕事観とは、いったいどういうものなのでしょうか。

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カネが欲しくば、くれてやろう

今は昔、西郷どんが明治維新の元勲として政府の要職にあった時のお話し。

古今東西、出世した人間の元には良くも悪くも人が集まってくるもので、西郷どんの元へは「仕事を紹介してくれ」と頼みにやってくる有象無象が今日もわらわら。

現代でも「小さいけれど、会社を経営している」などと言うと、ダメ元でしょうが「それなら雇ってくれないか」などと言ってくる手合いが絶えないようなものですね。

そんな時、西郷どんはどのようにあしらっていたのか……とある一例がこちら。

求職者「どうか政府に仕官できるよう、西郷様よりお口添えいただけませぬか」

西郷どん「ふむ……時におはん、俸給はいくら欲しかね

求職者「できますれば……金三十ほど」

求職者の応対に当たる西郷どん(イメージ)

この金三十が円であったとしたら、現代の価値でおよそ60万円。なかなかふっかけたものですが、恐らくはそこから値引き交渉を通して、月収十円から十五円(20~30万円)にありつこう。そんな肚づもりなのでしょう。

しかし、西郷どんにそんな小細工は通用しません。おもむろに懐中へ手を突っ込むと、用意してあった金三十の包みを取り出し、

「こいをやっ(意:これをくれてやろう)」

と一言。その意味するところを悟るや求職者は恥じ入り、その場を立ち去ったのでした。

終わりに

翁の顕職に在るや、一士人あり翁に謁して就職を依頼す。翁問ふて曰ふ、「俸給幾許を望むか」と。其人答ふ、「三十金を欲す」と。翁即座に三十金を懐中より取り出して之に贈る。其人愧じて辞し去りたり。

※『西郷南洲遺訓』逸話より

「お前は仕事をしたいのか、それともただカネが欲しいだけのか」

カネが欲しくば恵んでやろう……ただ、それでは乞食と変わりません。

エドアルド・キヨッソーネ「西郷隆盛像」

「天下公益に供する仕事がしたいのであれば、いくらでも紹介してやろう。よい仕事をすれば、カネなどおのずからついてくる」

生きるためにカネは必要ですが、カネのために生きてはならぬ。

仕事は事に仕える(天下公益に資する事業をなし、人々の幸福に仕える)営みであり、目先の日銭を漁(あさ)るためだけにするものではない。

そんな西郷どんの心意気は、今を生きる私たちにとっても誇り高く、そして実りある人生を送る上でとても大切なことを教えてくれます。

※参考文献:

山田済斎 編『西郷南洲遺訓』岩波文庫、2009年7月

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