天下の人心を鎮めるため、いよいよ上洛の兵を挙げた武田信玄(演:阿部寛)。その傍らには息子の武田勝頼(演:眞栄田郷敦)も控えています。
いやぁ、カッコいいですね。さすが御屋形様、親子そろって武田家のトレードマーク・諏訪法性兜(すわほっしょうのかぶと)を戴く雄姿は実に眼福です。
諏訪法性兜とは、武田家を守護する軍神・諏訪明神(すわみょうじん)の姿をかたどったもので、諏訪湖の龍神がモチーフとも言われます。
ところで、信玄・勝頼とも兜に毛のフサフサがついているのは、アレ何なのでしょうか。カッコいいけど、ちょっと気になりませんか?
筆者は気になったので、今回調べてみました。マメ知識を仕込むことで、NHK大河ドラマ「どうする家康」観賞にちょっと深みが増すかも知れません。
熊の毛ではないけど「熊毛」
結論から言うと、これは熊毛(くまげ)と言って熊の荒々しさを表現、あやかろうとした飾りです。
防御力も多少は上がるかも知れませんが、無くても大差はないでしょう。
染めた色によって白熊(はぐま)・赤熊(しゃぐま)・黒熊(こぐま)などと呼ばれます。
と言っても本当に熊の毛を使っている訳ではなく、南アジア(チベット、インド等ヒマラヤ地域)に棲息しているヤク(氂牛)の毛が使われています。
もちろん舶来品なので高級です。誰でも簡単に手に入れられるものではありません。
熊毛をつけた兜は「唐の頭(とうのかしら)」と呼ばれ、実は徳川家康(演:松本潤)も持っていました。
家康に 過ぎたるものが ふたつあり
唐の頭に 本多平八
本多平八とは徳川家中きっての猛将・本多忠勝(演:山田祐貴。平八郎)ですね。これは三方ヶ原の前哨戦・一言坂の合戦(元亀3・1572年10月ごろ)で奮戦した忠勝を讃えた狂歌です。
熊毛の兜も忠勝も、家康なんかにゃもったいない。そのうち両方奪ってやる(徳川家を滅ぼし、忠勝を軍門に降らせる)からそう思え!
……そんな思いが伝わってくるようですね。
スポンサーリンク
終わりに
そんな熊毛は、家康の天下統一から二世紀半以上の歳月を経た江戸幕末、新政府軍のトレードマークとして用いられました。
江戸城が明け渡された後、城内に宝蔵されていたものを装着したと言います。
白熊に赤熊、黒熊……舶来品の熊毛を身につけて、官軍の士気は大いに上がったことでしょう。
相楽総三(さがら そうぞう)率いた赤報隊などが有名ですね。
話を戻して、三方ヶ原の大決戦。武田の精兵三万騎(通説による)を率いる信玄・勝頼の雄姿を引き立てる白熊・赤熊の話題でした。
第17回放送「三方ヶ原合戦」、今から楽しみですね!
※参考文献:
- 太田臨一郎『日本軍の軍服 幕末から現代まで 写真集』国書刊行会、1980年3月
スポンサーリンク
コメント