令和7年(2025年)NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」いよいよ始まりました。
江戸のメディア王として活躍した蔦重こと蔦屋重三郎(横浜流星)。版元(出版者)として知られる彼ですが、自身でも創作活動を行っています。
きっと、数々の作家たちに触発されたのでしょうね。
例えば狂歌師として、蔦唐丸(つたの からまる)または蔦唐麿(からまろ)という名前(狂号)で活動していました。
蔦が「絡まる」「絡まろう(としている)」というのですね。
今回はそんな蔦唐丸が詠んだ狂歌を紹介。果たして、どんな作品だったのでしょうか。
想い人との別れ
きぬきぬ(後朝)は 瀬田の長橋 長ひきて
四つのたもと(袂)そ はなれかねける唐麿(蔦唐丸・蔦屋重三郎)
【意訳】想い人と別れなければならない後朝(きぬぎぬ)は未練が残り、まるで瀬田の長橋を思わせるほど長引く(なかなか去れない)ものだ。
時に四ツ刻(午前3:00ごろ)、男女お互いの袖が合計四つ重なって、なかなか離れられずにいる。
……別れなければならない四ツ刻に、四つの袖が離れられず、瀬田の長橋みたいに長引く様子が詠まれました。
蔦屋重三郎の妻子については諸説あるようですが、果たして彼にもそのような相手がいたのでしょうか。
小川の擬人化
夏痩(なつやせ)の小川の水をふとらせて
むなきも(胸肝)ふらすゆふ立(夕立)の雨唐麿(蔦唐丸・蔦屋重三郎)
【意訳】夏の暑さですっかり細くなってしまった小川を、夕立がにわかに増水させ、胸肝を震わせる勢いで降っている。
……現代で言うところのゲリラ豪雨でしょうか。日照り続きですっかり細く夏痩せしてしまった小川をたちまち太らせた夕立。
その雨足があまりに激しく、ふと恐ろしくなったのでしょうか。
小川が擬人化されているようで、面白いですね。
また「ふらす」が「(雨を)降らす」と「(胸を)震わす」にかけているものと思われます(ちょっと苦しい?)。
あるいは胸肝は小川のそれを指しており、すっかり膨れたことを示す「(胸や腹を)ふくらす」にもかけているのでしょうか。
この微妙な言葉づかいに、想像の余地と遊び心が感じられますね。
終わりに
今回は蔦屋重三郎が詠んだ狂歌を紹介してみました。
自分が創作してみることで、クリエイターたちの気持ちに寄り添ったプロモーションを実現できたのかも知れませんね。
当時は他にも多くの狂歌師が活躍しているので、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」にも多く登場することでしょう。
果たしてどんな風刺を効かせてくれるのか、彼らの活躍が楽しみですね!
コメント