健康な時は何とも思わない些細なことでも、具合が悪いと心細くなってしまうなんて話はよくあります。
そんなあるあるは昔の人にも共通していたようで、時にそんな思いがさまざまな形で記されました。
今回は大弐三位(だいにのさんみ。紫式部と藤原宣孝の娘・藤原賢子)が詠んだこんな一首を紹介したいと思います。
皆さんも共感できるのではないでしょうか。
早く夜が明けないかな……病床の孤独
いにしへは 月をのみこそ ながめしに
※藤原賢子『大弐三位集』より
今は日を待つ わが身なりけり
【意訳】昔から月ばかり眺めながらうっとりしていたけれど、今は早く夜が明けてお日様が昇らないかと、心細い限りです。
……夜は何かとネガティブになりがち。
若いころは月など見上げながら夜更かししていると、大人に近づいたような気がしたものですが、それは元気だからこそ。
ひとたび病気に伏せっていると、もうこのまま儚くなってしまうのではないかなどと、不安な妄想に襲われがちです。
早く夜が明けてほしい。明るいお天道様が恋しくてならない……そんな心情がよく解ります。
特にひとり暮らしをしていると、病気をしてもすべて自分でしなければなりません。
不安と寂しさに苛まれながら、孤独な夜を明かした記憶が蘇ってくるようですね。
大弐三位・プロフィール
本名:藤原賢子(けんし/かたいこ)
別名:大弐三位(夫の官職と自身の位階より)
生没:長保元年(999年)生?~永保2年(1082年)没
両親:父親・藤原宣孝/母親・紫式部
兄弟:異母兄弟のみ
伴侶:藤原兼隆(先夫)、藤原公信?、高階成章(後夫)
愛人:藤原頼宗、藤原定頼、源朝任ら
子女:源良宗室(兼隆女)、高階為家、女子(成章女)
位階:従三位
役職:藤原彰子女房、親仁親王(後冷泉天皇)乳母
終わりに
(八)
※『大弐三位集』より
従三位藤原賢子、れいならぬことありて、よろづ心細くおぼえけるに、人のもとより、いかがなど問ひてはべりければ、よめる
いにしへは 月をのみこそ ながめしに
今は日を待つ わが身なりけり
今回は大弐三位が病中の寂しさを詠んだ和歌を紹介しました。
奥手で陰キャだった母とは反対に、華やかな恋愛関係を持っていた彼女ですが、この時はきっと一人だったのでしょう。
あるいは「寂しいから早く来て!」というメッセージだったのかも知れませんね。
果たしてNHK大河ドラマ「光る君へ」では、誰が彼女を演じるのでしょうか。今から楽しみですね!
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