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【書評】鎌倉武士版「仁義なき戦い」…細川重男『宝治合戦 北条得宗家と三浦一族の最終戦争』朝日新書

歴史本
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時は宝治元年(1247年)6月5日、北条一族が三浦一族を滅ぼした宝治合戦が勃発。

それぞれのトップである若き執権・北条時頼(ほうじょう ときより)と三浦の棟梁・三浦泰村(みうら やすむら)は武力衝突を回避しようとするものの、周囲がそれを許しません。

執権による鎌倉幕政を維持したい北条一族と、将軍による親政回帰を切望する三浦一族によるつぶし合いは、もはや避けられないところまで行き詰っていたのでした。

「鎌倉殿の13人」後伝とも言うべき時代のお話し。

『頼朝の武士団』など数々の著作で知られる鎌倉時代の研究家・細川重男が贈る鎌倉武士版「仁義なき戦い」「アウトレイジ」。史料『吾妻鏡』をベースに自由闊達な解釈をもって切り込んだ細川版「意訳・吾妻鏡」

歴史小説の前後に史実の解説を挟んだ斬新な手法で、時代の隙間を活き活きと描き出した意欲作、ぜひ皆さんにもおすすめです。

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強烈なキャラクターが入り乱れる歴史アウトロー絵巻

まずは主要人物のざっくりとした紹介から。

あなたの「推し」は誰ですか?

【北条派】

  • 北条時頼(義時の曾孫)
    …兄・北条経時(つねとき)の急死によって執権の座を継いで間もない若き棟梁。
  • 北条政村(まさむら。義時の子、時頼の大叔父)
    …若き時頼を補佐する長老で、北条一族の重鎮。
  • 北条実時(さねとき。義時の孫で政村の甥)
    …北条一族のインテリ。長老たちにツッコミを入れる役どころ。
  • 大蓮房覚地(だいれんぼう かくち。安達盛長の嫡男・安達景盛)
    …高野山から鎌倉へ戻ってきた怪僧。三浦一族の専横に安達存続の危機を感じて息子たちを叱咤(罵倒?)。対三浦の急先鋒。

【三浦派】

  • 三浦泰村(三浦義村の次男)
    …三浦一族の惣領。時頼と同じく北条との武力衝突を防ぎたいが、荒ぶる弟たちを制御できない。
  • 三浦光村(みつむら。同じく三男)
    …通称「三ちゃん(ただし気安く呼んだら殺す)」。源氏累代の武闘派・三浦一族を実質的に指導する。乳兄弟であった公暁(くぎょう。源頼家の子)への思慕から、北条専制の打倒と将軍親政の復活を志す。
  • 三浦家村(いえむら。同じく四男)
    …三浦一族が誇る狂犬。女性だろうが何だろうが笑って惨殺する凶暴さが身上。一方で明るくてジョークも嗜む明るい性格の美男子でもある。怖いけど女の子にはモテる憎めないキャラ。
  • 長尾景茂(ながお かげもち)
    …三浦家塁代の郎党で、父はかつて公暁を討った長尾定景(さだかげ)。泰村に忠誠を誓い、必要とあれば光村・家村の暗殺さえも辞さない。油断ならないが、こういう人間が意外と頼りになるものである。
  • 毛利西阿(もうり せいあ。大江広元の子・毛利季光)
    …三浦義村の娘を娶っており、泰村たちとは義兄弟に当たる。当初は合理的に判断して北条につこうとしたが、妻からの「それでも武士なの!?」という言葉に胸打たれて三浦に与することに。士は己を知る者のためにこそ死ぬべきものなのである。

……我ながら「おい、三浦の方ばかりどうしてこんなに充実しているんだ。不公平じゃないか」と言いたくなりますが、かつて知人が指摘した通り、やはり筆者は何だかんだ三浦びいきのようです。

それはそうと作者の感情移入もあるようで、全体的に三浦一族の方がキャラクターも濃厚な印象。もちろん北条側にも強烈な逸材が揃っているので、ぜひ本編でお確かめください。

不法行為を働く武士たち。近世のような高潔な武士像など、ここにはなさげ。

先ほど鎌倉武士版「仁義なき戦い」「アウトレイジ」なんて言いましたが、筆者は『頼朝の武士団』でも書いていたように、当時の武士たちが発していた「残虐だけど、どこか憎めない空気」を表現するのがお好み。

鎌倉武士≒ヤクザという前提から、言い回しなんかはヤクザ映画のそれっぽい感じです(筆者はあまりヤクザ作品には詳しくないのですが、イメージ的に)。

しかし趣旨は解るのですが、センスや好みの違いか筆者的には違和感を覚えてしまいます。坂東武者が関西弁(だいたいヤクザは関西~中国弁の印象)で凄むからでしょう。

三浦の者であれば相州弁(北東部を除く神奈川方言。ここでは特に三浦方面のもの)を織り交ぜてくれると「あぁ、横須賀のヤンキー(米軍ではなく不良青年の方)ってこんな感じだよね」とより親近感が湧いたかと思います(神奈川県民としては)。

でも、言いたいことはよく伝わりました。

伝・三浦一族の腹切りやぐら(画像:鎌倉市)

詳細については読んでのお楽しみにとっておきますが、まずは歴史小説の部分だけ読んで、それから(興味が湧いたら)前後の解説を読むというのが気楽でいいかと思います。

(※歴史の詳しい話は別にいいよ、という方が最初から読んでしまうと、退屈で挫折してしまうかも知れませんから)

あと、事前に現代語訳でも十分なので『吾妻鏡』の宝治元年(1247年)4月~6月の部分をざっと予習して=読んでおくと、物語の随所に散りばめられたネタをより堪能できるでしょう。

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書籍データ

義時法華堂と三浦一族腹切りやぐらの上に眠る毛利季光・大江広元(と島津忠久)の墓。筆者撮影

細川重男『宝治合戦 北条得宗家と三浦一族の最終戦争』朝日新書

【出版社コメント】
「鎌倉殿の13人」の 仁義なき 血みどろ抗争は終わっていなかった! 鎌倉幕府No.1北条氏とNo.2三浦氏で争われた宝治合戦(1247年)。北条氏が勝利し得宗独裁体制が確立される。鎌倉時代の大転換点となった戦いを解説編150頁&小説編200頁で徹底解説。(Amazonより)

【著者紹介】
昭和37年(1962年)生まれ。東京都出身。平成9年(1997年)立正大学文学博士など。著作に『頼朝の武士団 鎌倉殿・御家人たちと本拠地「鎌倉」(朝日新書)』『鎌倉幕府抗争史 御家人間抗争の二十七年間(光文社新書)』など。

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