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【書評】菅野覚明『武士道の逆襲』講談社現代新書

歴史本
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武士道と聞いて、皆さんは何を連想しますか?

「武士道といふは、死ぬ事と見附けたり」……と切り出す『葉隠』の名フレーズや、あるいは新渡戸稲造『武士道』なんかが有名でしょうか。

細かく表現すればキリがありませんが、ここでは簡単に「正義のために命を惜しまない高潔な精神に基づく生き方」などとしておきましょう。

西洋の騎士道に対して、東洋には武士道精神がある……という幻想に、思いっきり水をぶっかけるのが本書です。

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武士道は大和魂ではない!

確かに武士の中には高潔な精神の持ち主や、大和魂の体現者もたくさんいて、そうした美談やエピソードも多く伝わっています。

しかし武士とは戦うことで生計を立てることを本質とし、突き詰めれば「戦さに勝利し、敵を倒して目的を達する」ことが至上命題。

自己ひいては一族の存亡を懸けて戦う中で、キレイごとなんぞかなぐり捨てなければならないシーンも決して少なくありません。

かと言って、一切のモラルもへったくれもなくただ勝ちをのみ求め、利権を掻き漁るばかりでもなく、殺し合いの中でこそ培われる特殊な道徳らしきものが生まれ、やがてはそれが武士道と呼ばれ、確立されていきました。

永年、愛読してボロボロに(筆者撮影)

本書では、戦うことで生きて来た兵(つわもの)が武士となって新たな世を開き、やがて戦う必要がなくなって官僚化、そして武士の世が終焉を迎えた後も日本人の精神を形づくる一要素として現代に伝えられる武士道の変遷を紹介。

武士とは私たちから遠く離れ、到底及びもつかないような高潔で超越的な存在ではなく、私たちと地続きの生活者であり、守るべき大切なものにこそ武を振るったエピソードの数々は、共感できるところも多いのではないでしょうか。

現代日本人の武士道観をひっくり返すべく叩きつけられた挑戦状とも言える刺激的な一冊、どうか手にとって欲しいと思います。

筆者の独断と偏見でおススメする、本書お気に入りのエピソード

内藤修理(画像:Wikipedia)

・武士道とは何か
・根本は人を切ること
・本当の強さとは何か
・あらかじめ死んでおく
・生死の場での常識
・「大和心」の創出
・恋か、忠義か

※本書オビ裏より

一、「説明」より「事実」……余五将軍と沢胯四郎の死闘

一、「兵の威」……人質を解放させた源頼信のこと

一、あさましきわざ……貴人の夜道を護衛した平致経のこと

一、「脇差心」とは……武田家中における喧嘩両成敗の事例

一、「男道のきつかけ」……信玄公に意見した内藤修理のこと

【書籍データ】

  • 筆者紹介:菅野覚明(かんの かくみょう)
    昭和31年(1956年)東京出身。昭和54年(1979年)に東京大学文学部倫理学科卒、同大学院博士課程単位取得退学。倫理学・日本倫理思想史を専攻、主著に『神道の逆襲(サントリー学芸賞受賞)』『新校訂 全訳注 葉隠』など。
  • 発行:講談社現代新書、2004年10月20日 第1刷

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