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【書評】細川重男『頼朝の武士団 鎌倉殿・御家人たちと本拠地「鎌倉」』朝日新書

歴史本
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歴史ファンの間でも、あまり人気がない印象の源頼朝(みなもとの よりとも)公。

その理由は「天才軍略家な弟・源義経(よしつね)に嫉妬して殺した」「御家人たちに対する陰険な態度」「恐妻家のくせに女癖が悪い」……などなど、およそ主人公らしからぬイメージが大きく影響しているようです。

確かにそういう面も否定はできません。でも、少し視点を変えてみると、そこには「情に熱くて憎めない、鎌倉の大親分」像が浮かんでくるではありませんか。

本書はそんな頼朝公と愉快で物騒な御家人たちとのドタバタエピソードを満載。多彩で濃密なキャラクターの中には「あぁ、いるいるこんなヤツ」が見つかること請け合いです。

戦国時代や幕末に比べて、とかく地味で暗い印象ゆえか人気のない平安・鎌倉時代ですが、そこに生きる御家人たちの姿は、現代の私たちと同じくらいしょうもなく、そして愛しいもの。

他のどの時代にも負けない魅力的な、あなただけのお気に入りの御家人を、是非とも見つけてほしいと思います。

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再版によって補完された頼朝公と義時の物語

ちなみにこの本、以前に『頼朝の武士団 将軍・御家人たちと本拠地・鎌倉』というタイトルで平成24年(2012年)に出ており、一度絶版になっていたのですが、令和4年(2022年)放送予定の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を前に復活したもの。

旧バージョン。

タイトルが一部改編され、将軍から鎌倉殿に、最後の鎌倉もカッコで「鎌倉」と強調するなど、大河ドラマを意識しているのが分かります。

筆者も既に持っていますが、今回の再版に当たって大幅に書き下ろしが加わって倍近い内容に増量しており、(初版にはなかった)頼朝公の死後から承久の乱を経て、主人公・北条義時(ほうじょう よしとき)らの最期までしっかり紹介。

頼朝公の生前はどことなく父(北条時政)や姉(北条政子)の陰で存在感の薄かった義時が、その背中を見て着実に成長し、最後は承久の乱という大舞台に立って武士の世を切り拓くに至るドラマを、しっかりと予習できます。

北条義時(左)と後鳥羽上皇(右)

ハッキリ言って、この一冊を読んでおけば、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の内容はほとんど判ると言っても過言ではありません。

もちろん、脚本の書き方や役者の演じ方によって違いは出るものの、ベースとなる史実を知っておくことで、「あぁ、この御家人のエピソードをこういう風に解釈・表現したんだね」など、ワンランク上の楽しみ方が出来るでしょう。

「女好きの遊び人で、ちょっと短気だけど憎めない、人一倍情に熱い我らが親分」源頼朝公、そして「ボンヤリとその背中について行き、気づけば武士の世を賭ける大勝負に立たされた」北条義時。

今回の再版によって補完された彼らの物語を、ご堪能いただけましたら幸いです。

【書籍データ】

『頼朝の武士団 鎌倉殿・御家人たちと本拠地「鎌倉」』

  • 著者:細川重男(ほそかわ しげお)
  • 1962年、東京都生まれ。立正大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程満期退学。博士(文学)。現在、國學院大學非常勤講師、中世内乱研究会総裁。著書に、『鎌倉政権得宗専制論』『鎌倉幕府の滅亡』『執権 北條氏と鎌倉幕府』など。
    ※本書裏表紙より
  • 発行:朝日新聞出版、2021年11月30日 第1刷

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