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【鎌倉殿の13人】結局どっち?アノ肖像画が源頼朝公と確信できる伝統的な日本の美意識

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「常識を疑う」ことは歴史を学ぶ上で非常に大切な視点であり、近年でも従来の常識をくつがえす様々な学説が提唱されています。

そんな一つが、神護寺(京都市右京区)に所蔵されているこちらの肖像画。

神護寺蔵・伝源頼朝公肖像

これまで源頼朝(みなもとの よりとも)公を描いたものとされてきましたが、近年になって「これは頼朝公ではなく、足利直義(あしかが ただよし)である」とする説が浮上。

どちらともはっきりしない中で、現在とりあえず「伝」源頼朝像(源頼朝と伝わっている肖像)という表現になっています。

果たしてこの美男子武人像は、源頼朝公と足利直義のどっちなのでしょうか。

(※後に研究が進んで第三者である可能性を指摘する説が出てくる可能性も考えられますが、キリがないのでここでは「源頼朝公か足利直義か」のどっちかに限定します)

これは頼朝公だ、いや直義だ……。

様々な学説が飛び交う中で、もっとも興味深く腑に落ちる説を目にしたので、今回こちらに紹介したいと思います。

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この肖像画が源頼朝公と確信できる伝統的な美意識

結論から先に言うと、この肖像画は「源頼朝公である」イコール「足利直義ではない」と考えられます。

なぜそうなるのか?「神護寺肖像=頼朝公」説の根拠について順に説明していきましょう。

まず、頼朝公と直義それぞれの極官(ごくかん)に注目します。

極官とはその人が任じられた生涯最高官職を言い、頼朝公は右近衛大将(うこのゑのだいしょう。右大将)、直義は左兵衛督(さひょうゑのかみ)です。

ちなみに征夷大将軍は常設の官職でないため、ここでは除外されます。

天皇陛下とその左右に近侍する者たち(イメージ、矢印は向き)

右や左と言うのは天皇陛下の側近く仕える際の配置であり、天皇陛下から見て右手側に「右」近衛大将らが、反対に天皇陛下から見て左手側に「左」兵衛督らが控えるのが正式でした。

これを踏まえて、肖像画とは通常その人にとって「最も栄誉ある状態」を描くものであり(※徳川家康のしかみ像などは例外)、日本人にとって最も栄誉ある状態とは、天皇陛下の近くにお仕えすることを措いてありません。

もちろんそんな栄誉に与れる人は滅多にいませんが、その滅多な一人であった(資格を有していた)頼朝公であれば、装束から考えても(実際にあったかどうかはともかく)宮中で天皇陛下にお仕えする姿を描いたと考えるのが自然でしょう。

天皇陛下から見て右側に近侍する右大将の頼朝公(イメージ)

なお天皇陛下の御真影を自分の肖像画に描かせるのは、天皇陛下を脇役にしてしまう不敬に当たります。

なので、実際には描かず「すぐそばにいらっしゃる」ものと見なします(上の画像はイメージしやすいよう、便宜上作成)。

極官にあって天皇陛下にお仕えする状態を描くのであれば、肖像画を見る=天皇陛下に向かい合う者から向かって右を向いているのが頼朝公であり、直義であれば左を向いているはずです。

皇室に対して不敬がまかり通っている現代ならばいざ知らず、往時の人々が畏れ多くも天皇陛下の視点で絵を描くはずもありません。

「めんどくさいな。肖像画なんて、好きなように描けばいいんじゃないの?」

現代の感覚ではそうでしょうし、もちろんそれも一理あります。

しかし、その人の栄誉を顕彰する目的で描くのであれば、それ相応の描き方というものがあります。

そういう日本人が古くから伝えてきた美意識や価値観に立って考えれば、やはりこの肖像画は頼朝公に違いない(少なくとも直義ではない)と確信できるのではないでしょうか。

終わりに

【神護寺の武人像が源頼朝公と確信できる根拠まとめ】

一、 肖像は極官にある頼朝公が天皇陛下にお仕えする栄誉の姿を描いたもの
一、 頼朝公の極官である「右」近衛大将は天皇陛下から見て右手に控える=肖像画を見る者に対して右を向いているのが正式である
一、極官が「左」兵衛督であった足利直義であれば、左を向いているはず

これらの根拠から、神護寺の武人肖像画がやはり源頼朝公と確信できることを紹介してきました。

勝川春亭筆・足利直義像。

何かと新儀の巧み出される昨今。

しかし現代人の感覚だけではなく、往時の価値観や美意識なども含めて学ぶことで、より深く先人たちの思いを味わえるのではないでしょうか。

※参考文献:

  • 細川重男『頼朝の武士団 鎌倉殿・御家人たちと本拠地「鎌倉」』朝日新書、2021年11月

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