よく「便りのないのがよい便り」と言うように、特に問題がないと連絡を怠ってしまいがち。こと返信についてはそうで、返事がない(来ない&しない)≒OKと解釈する習慣が身についている方も多いのではないでしょうか。
かく言う筆者も、些細な事については「相手も分かっているだろう」と返事をせず、空気で流してしまうことがしばしば。
しかし「親しき仲にも礼儀あり」で、きちんと返事をするに越したことはありません。今回はそんなことを戒めた鎌倉時代の御家人・北条重時(ほうじょう しげとき)の教訓集『六波羅殿御家訓(ろくはらどのごかくん)』を紹介。
「そんなこと、言われなくても分かっているよ」と言いたくなるものの、分かっていてもなかなか実践できないのが人の常。ここは一つご耳目を拝借したく思います。
人の許より文をこせたらは……
一、人の許より文をこせたらは、我か身はたれりと思とも、人にいひ合て返事をすへし、召仕者内、外なき人の事は沙汰の限にあらす、但御物沙汰の事にをきては殊なる事なくとも、故実の仁を召て、能々云合せ■■(とり)計へし、いはんや大事をや、
※『六波羅殿御家訓』第11条
【意訳】人から文書が届いたら、返事の必要はないと思っていても、きちんと返事をするように。召し使う者のうち、よほど親しい者は別である。ただし公務においては大小を問わず、故実に詳しい者のアドバイスを受けて連絡を密にすること。まして重要事項については言うまでもない。
※沙汰の限(さたのかぎり)にあらす(非ず)……ここでは「取り決めた限りではない」すなわち例外の意。
※御物沙汰(おんものざた)……お上による物事への沙汰。すなわち公務の意。
※故実の仁(こじつのじん)……故実とは前例、作法など。ここではそれらをよく知るベテランの意。
要するに「よほどツーカーな関係でなければ返事をしなさい。特に公務は大小を問わず」ということですね。
いちいち返事をするのが面倒に思われるかも知れませんが、あまり返事がないと重要なことについても「あの件、ダメでしたか?返事がないからOKかと思って進めちゃいました」などといった事態を引き起こしかねません。
一方、こまめに返事をする習慣が定着していれば、部下も
「あの人は、ちゃんと返事をしてくれるから、その意思決定がない限り勝手なことはしない」
と必ず確認してくれるようになりますし、上司も
「あの者は、こまめに返事をしてくれるから、きちんと意志疎通できた上で仕事を進めてくれる」
と安心します。こうした小さな積み重ねが大きな信頼を生み、それがやがて大きな成果へと結びついていくことでしょう。
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終わりに
……とまぁ、分かってはいるけどなかなか実際は面倒なのが報連相というもの。又いくら自分がその気になっても、相手がそれを面倒がることも少なくないため、なかなか実践できないのが実情です。
自分と密に連絡をとり合ってくれるように、日頃から信頼関係を築いておくことが大事。連絡に限らず、身近なことからコツコツ始めて(続けて)いきたいですね。
※参考文献:
- 桃裕行 校訂『北條重時の家訓』養徳社、1947年10月
- 『増補改訂 武家家訓・遺訓集成』ぺりかん社、2003年8月
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