令和6年(2024年)NHK大河大河ドラマ「光る君へ」。京都・平安神宮でクランクイン情報(5月28日)が入るなど、早くも来年が楽しみですね!
さて、本編の主人公「まひろ(演:吉高由里子)」こと紫式部(むらさきしきぶ)。平安時代を代表する長編傑作『源氏物語』の作者として文筆を奮いましたが、その実名は解明されていません。
紫式部とはいわゆる女房名(にょうぼうな。女性の名前を直接呼ぶことを控える習慣から、宮仕えの便宜上つけられたビジネスネームの一種)。
紫とは『源氏物語』のメイン(異論は認めません)ヒロインである紫上(むらさきのうえ)から、式部は父・藤原為時(演:岸谷五朗)か兄弟・藤原惟規(演:高杉真宙)の官職に由来すると言われます。
なお『源氏物語』がヒットする前は藤原一族の頭文字をとって藤式部(とうしきぶ)と呼ばれていました。
そんな紫式部の本名は今なお謎とされていますが、中には「藤原香子」ではないかとする説があるようです。
藤原道長(演:柄本佑)が書いた『御堂関白記』の記述が根拠とのこと。果たして何が書いてあるのでしょうか。
紫式部=藤原香子?それとも藤原秀子?
廿九日。丁卯。源中納言来云。按察可兼右大将。大間落。奏聞可被入者也。有掌侍召。以藤香[或ハ秀カ]子。可被任者。参東宮。啓権大夫慶由。此日雨下。
※『御堂関白記』寛弘4年(1007年)1月29日条
この掌侍(ないしのじょう)という女官に任じられた藤香子(あるいは秀子か)こそ、紫式部の本名だと言うのです。
仮にこの「藤原香子(藤原秀子)」が本名だとしたら、読み方は何でしょうか。現代なら香子で「きょうこ」と読みそうですが、「かおるこ/こうし/たかこ/よしこ」など諸説あると言います。
当時の女性は名前(特に読み)が他人に知られることを忌む慣習があったため、香子と書いてストレートに「かおるこ/こうし」と読むのはリスクが高そうです。
かと言って、まったく関係のない読みでは家族や当局にとっても不都合なため、ある程度は関係のある読みのバランスを考えました。
だから香り高い「たかこ」や、香りのよい「よしこ」の方が可能性が高いでしょう。
一方の秀子も「ひでこ/しゅうし」では安易に読まれてしまいますから、こちらも他に秀でてまさる「まさこ」、花が咲く「さきこ」などの読みが考えられます。
ただしこの説には反論もあります。もし紫式部が掌侍という公的な官職に就いたのであれば、勅撰集や系譜などにそれが言及されていないのは不自然です。
いまだ決着を見ないまま論争が続いており、紫式部の本名については今後の究明が俟たれます。
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終わりに
ところで、大河ドラマ「光る君へ」で彼女が「まひろ」と名づけられたのは「ボーイッシュ、ユニセックスな名前」で「自分で扉を開けて飛び出していく」キャラクターを描くためとのこと。
※参考:来年大河『光る君へ』制作統括、吉高由里子演じる紫式部の名前“まひろ”誕生秘話
天性の頭脳を備えながら周囲とのコミュニケーションが苦手で、内心の葛藤を文筆にぶつけて発散する孤高の才女……そんな従来のイメージを打破する展開が期待されます。
来年の放送が楽しみですね!
【紫式部・基本データ】
生 没 | 天延元年(973年)ごろ生~長元4年(1031年)ごろ没 |
両 親 | 藤原為時/藤原為信女(劇名:ちやは) |
兄 弟 | 姉(氏名不詳/藤原為時女)、藤原惟規(兄?弟?両説あり) |
伴 侶 | 藤原宣孝、死別後に藤原道長(妾との説もあり)? |
子 供 | 藤原賢子(大弐三位) |
作 品 | 『源氏物語』『紫式部日記』等 |
※参考文献:
- 『御堂関白記 上巻』国立国会図書館デジタルコレクション
- 角田文衛『紫式部とその時代』角川書店、1966年1月
- 岡一男『増訂 源氏物語の基礎的研究 紫式部の生涯と作品』東京堂出版、1966年8月
- 萩谷朴『紫式部日記全注釈 下巻』角川書店、1978年8月
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