NHK大河ドラマ「どうする家康」、皆さんも楽しんでいますか?
さて、第17~18回の2週にまたいだ三方ヶ原合戦(元亀3・1572年12月22日)では、徳川家康(演:松本潤)が討死したとの報せに動揺された方がいたかも知れません。
視聴者の多くは、結末(家康の人生)をおおむね知っているため「そんな訳ないだろ。どうせ生きてたってオチだろ?」と思われたことでしょう。
確かにそうなのですが、当時の現場では家康討死の急報に少なからず動揺が走ったという記録もありました。
今回は『三河物語(みかわものがたり)』より、岡崎城の様子をのぞいてみたいと思います。
間一髪で防がれた誤報
……山田平一郎ハ岡崎迄にげ行て。次郎三郎様之御前丹て。大殿様は御打死を被成候と申上候處へ。上様ハ無何事御城へいらせられ被成候、志よ大名衆も一人も無何事引のけ申成。……
【意訳】山田平一郎(やまだ へいいちろう。山田正勝)は岡崎城まで逃げ延び、徳川信康(演:細田佳央太。次郎三郎)の前で「大殿様(家康)が御討死をなされ候」と申し上げる。
するとそこへ、後から到着した者が「上様(これも家康)は何事もなく浜松のお城へ入られています。諸大名衆(ここでは家老や重臣たち)も皆様ご無事に退却なされました」と申し上げた。
※『三河物語』第三下
……家康討死の誤報が広がってしまう前に、間一髪で防がれたようで何よりでした。
とかく戦場では様々な情報が飛び交い、人々はあらぬ噂や憶測を交えてデマを生み出してしまうもの。山田平一郎が虚報の咎で罰せられた様子はなかったようです。
その後、信康の死後も平岩親吉(演:岡部大)・井伊直政(演:板垣李光人)・羽柴秀次(はしば ひでつぐ)・前田利長(まえだ としなが)と渡り歩いて奉公したのでした。
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三方ヶ原合戦・徳川家臣団の討死者一覧
かくして無事がわかった家康。しかし多くの徳川将兵が戦場に斃れており、『三河物語』では以下の者たちが討死しました。
……御手前之衆尓ハ。青木又四郎殿(青木貞治)。中根平左衛門(中根正照)斗。物主ハ打死仕候。其外若き衆家老共ハ鳥居四郎左衛門(鳥居忠広)。本多ひ後守(本多忠真)。賀藤◆ねの丞(加藤利正)。同九郎次郎(加藤正信)。ゑのきづ小太夫(米津政信)。大久保新蔵(大久保忠寄)。河井やつと兵へ(詳細不明)。杉之原ナつと兵へ(詳細不明)。榊原摂津守(榊原忠直)。成瀬藤蔵(成瀬正義)。石河半三郎(数正一族?)。夏目次郎左衛門(夏目広次)。河井又五郎(詳細不明)。松山久内(詳細不明)。賀藤源四郎(加藤景継)。松平彌右衛門(詳細不明)殿。何◆も此外尓。此とおり之衆。数多候へ共志る寸尓不及……。
※『三河物語』第三下
- 青木貞治(あおき さだはる)
- 中根正照(なかね まさてる)
- 鳥居忠広(とりい ただひろ。鳥居元忠の弟)
- 本多忠真(演:浪岡一喜。肥後守)
- 加藤利正(かとう としまさ)
- 加藤正信(まさのぶ。利正の子)
- 米津政信(よねきづ まさのぶ)
- 大久保忠寄(おおくぼ ただより。大久保忠世の弟)
- 河井やつと兵衛(かわい やっとべゑ?)
- 杉之原ナつと兵衛(すぎのはら なっとべゑ?)
- 榊原忠直(さかきばら ただなお)
- 成瀬正義(なるせ まさよし)
- 石河半三郎(いしかわ はんざぶろう。石川数正の一族?)
- 夏目広次(演:甲本雅裕。次郎左衛門)
- 河井又五郎(かわい またごろう。前出の河井やつと兵衛と同族?)
- 松山久内(まつやま くない/きゅうない)
- 加藤景継(かげつぐ。加藤利正の子で加藤正信の弟)
- 松平彌右衛門(まつだいら やゑもん。詳細不明。家康の一族か遠戚か)
などなど、他にも多くの者たちが戦場に命を散らせています。
終わりに
「わしは……皆に生かされた……決して無駄にはせぬ……!」
三方ヶ原の手痛い惨敗を乗り越え、家康は武田家へ反撃を開始するのですが、それはもう少し先の話し。
果たして家康は多くの犠牲を糧に、大きく飛躍できるのでしょうか。今後の展開に注目ですね!
※参考文献:
- 『日本戦史材料 第2巻 三河物語』国立国会図書館デジタルコレクション
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