藤原道長には平安貴族の例に漏れず、多くの妻がいました。記録に正室の源倫子をはじめ、6名以上の妻たちがいたとか。
今回はそんな道長の妻たちの中から、2人目の妻と言われる源明子(みなもとの めいし/あきらけいこ)を紹介。
果たして彼女はどんな女性で、どんな生涯をたどったのでしょうか。
父の失脚で人生が暗転
源明子は生年不詳、父親は源高明(たかあきら。醍醐天皇の第十皇子)、母親は愛宮(あいのみや。藤原師輔五女)。実の弟に源経房(つねふさ)がいます。
名前の読みは明子なので「あきこ」でよさそうなものですが、実名(忌み名)を隠す習慣から直接は読まず、音読みで「めいし」又は訓読みで「あきらけいこ(明らけし)」と読まれるケースが多いです。
ただし実際の読みについては明らかにされていないため、いずれも仮説の域を出ません。
父の源高明は左大臣の高位にありましたが、安和2年(969年)に謀叛を密告されて失脚。この事件を「安和の変(あんなのへん)」と言い、以来源明子の人生に影を落とします。
源明子は叔父の盛明親王(もりあきらしんのう。醍醐天皇の第十五皇子)に引き取られ、その養女となりました。
天元5年(983年)に父の高明が亡くなり、寛和2年(986年)には養父の盛明も亡くなると、東三条院こと藤原詮子(道長の姉)に庇護されます。
道長の側室となる
それから間もなく詮子の引き合わせか永延2年(988年)道長と結婚、その住まいから高松殿(たかまつどの。父・高明の邸宅。京都市中京区)と呼ばれるように。
道長との夫婦仲は悪くはなかったらしく、四男二女を授かったそうです。
【源明子と藤原道長の子供たち】
- 正暦4年(993年) 藤原頼宗(よりむね。次男)~康平8年(1065年)没
- 正暦5年(994年) 藤原顕信(あきのぶ。三男)~万寿4年(1027年)没
- 長徳元年(995年) 藤原能信(よしのぶ。四男)~康平8年(1065年)没
- 長保元年(999年) 藤原寛子(かんし。道長三女。小一条院女御)~万寿2年(1025年)没
- 長保5年(1003年)ごろ 藤原尊子(そんし。道長五女。源師房室)~寛治元年(1087年)没
- 寛弘2年(1005年) 藤原長家(ながいえ。道長六男)~康平7年(1064年)没
通説では道長の正室である源倫子(りんし/みちこ/ともこ。鷹司殿。源雅信女)より後に結婚したとされてきました。
しかし近年では源明子の方が倫子よりも先に婚姻関係をもっていたとする説も出ているようです。
ただし源明子には倫子と違って強固な後ろ盾がなかったため、妻としての格は低くおさえられ、子供たちも相応の地位に甘んじるよりなかったとか。
やがて治安3年(1023年)に弟の源経房が世を去り、永承4年(1049年)7月22日には自身も生涯に幕を下ろしたのでした。
源明子・関連略年表
年代不詳 | 誕生 |
安和2年(969年) | 父・源高明が失脚(安和の変)。叔父の盛明親王に引き取られて養女となる |
同年 | 実弟・源経房が誕生する |
天元5年(983年) | 父・源高明が亡くなる |
寛和2年(986年) | 養父・盛明親王も亡くなり、藤原詮子に庇護される |
永延2年(988年) | 藤原道長と結婚する |
正暦4年(993年) | 長男・藤原頼宗(よりむね。道長の次男)を産む |
正暦5年(994年) | 次男・藤原顕信(あきのぶ。道長の三男)を産む |
長徳元年(995年) | 三男・藤原能信(よしのぶ。道長の四男)を産む |
長保元年(999年) | 長女・藤原寛子(かんし。道長の三女。小一条院女御)を産む |
長保5年(1003年)ごろ | 次女・藤原尊子(そんし。道長の五女。源師房室)を産む |
寛弘2年(1005年) | 四男・藤原長家(ながいえ。道長の六男)を産む |
治安3年(1023年) | 実弟の源経房が亡くなる |
万寿2年(1025年) | 長女の藤原寛子に先立たれる |
万寿4年(1027年) | 5月14日、次男の藤原顕信に先立たれる |
12月4日、夫の藤原道長に先立たれる | |
永承4年(1049年) | 7月22日 亡くなる |
生年不詳ながら、確認できる限りでも安和2年(969年)から永承4年(1049年)までの80余年は生きていたことになります。相当な長寿ですね。
終わりに・NHK大河ドラマ「光る君へ」では
道長のもう一人の妻 源 明子(みなもとのあきこ)
※NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイト(登場人物)より
瀧内 公美(たきうち・くみ)
藤原道長のもう一人の妻。父の源高明が政変で追い落とされ、幼くして後ろ盾を失った。のちに、まひろ(紫式部)の存在に鬱屈(うっくつ)がたまっていく。
以上、源明子の生涯をたどってきました。NHK大河ドラマ「光る君へ」では「あきこ」読みにするようですね。
権力の絶頂に上り詰めた道長の妻でありながら、その不安定な立場から鬱屈がたまったことは想像に難くありません。
そんな中、紫式部(役名:まひろ)とどのような関係を築いていくのでしょうか。瀧内公美の好演に期待しましょう!
※参考文献:
- 金子幸子ら編『日本女性史大辞典』吉川弘文館、2008年1月
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