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優柔不断を解消するには?武士道バイブル『葉隠』が説く七呼吸の教え

古典文学
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皆さんは、物事をすぐに決められる方ですか?例えば外食のメニューなど、なかなか決まらない方もいるでしょう。

しかし時間をかければ満足のいく選択が出来るかと言えば、必ずしもそうとも言えないようです。

どっちにしようか……(イメージ)

さんざん迷った挙げ句に悩み疲れ、結局はテキトーかつ不本意なメニューを選んでしまう方も少なくありません。

その一方、直感でパッと決めて後悔することは意外に少なく、だったら最初からそうしておけばよかったと言うもの。

(※もちろん結婚相手や家の購入など、熟慮を要する例外もあります)

この優柔不断さは往時の武士たちも悩みの一つだったようで、江戸時代の武士道バイブル『葉隠(はがくれ。葉隠聞書)』にこんな答えが用意されていました。

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古人の詞に、七息思案と云ふことあり……

一二二 古人の詞に、七息思案と云ふことあり。隆信公は、「分別も久しくすればねまる。」と仰せられ候。直茂公は、「萬事しだるきこと十に七つ悪し。武士は物毎手取早にするものぞ。」と仰せられ候由。心気うろゝゝとしたるときは、分別も埒明かず。なづみなく、さわやかに、凛としたる気にては、七息に分別するものなり。胸すわりて、突つ切れたる気の位なり。口傳。

※『葉隠』巻第一より。

【意訳】昔の言葉に、七息思案(しちそくしあん)というものがある。

宗龍寺蔵 龍造寺隆信肖像

かつて龍造寺隆信(りゅうぞうじ たかのぶ)公は「判断力は、時間をかけるほど鈍ってくる」とおっしゃった。

鍋島直茂(なべしま なおしげ)公は「時間をかけるのは、十中七つ悪いことだ。武士は何でも手っ取り早く処理せねばならぬ」とおっしゃったそうだ。

精神がうろうろと動揺していると、判断力は鈍ってしまう。

ぐずぐずせず爽やかに、肚をくくって決断するには、七呼吸をタイムリミットと決めるのだ。

そうすれば度胸もついて、吹っ切れるものだと口伝えに教わった。

……鍋島直茂とは『葉隠』口述者である山本常朝(やまもと じょうちょう)らが仕える佐賀藩の祖。龍造寺隆信は肥前(現:佐賀・長崎県)の戦国大名で、直茂の元主君に当たります。

ちなみに常朝らが仕えたのは直茂の孫・鍋島光茂(みつしげ)の代。戦国乱世もすっかり昔となっていました。

じっくり時間をかけて考えたいのはやまやまですが、今にも敵が攻めかかってこようという緊急時には、即断即決が欠かせません。

心身を落ち着かせて冷静さを取り戻すため、大きくゆっくり七呼吸。次の瞬間、自分の下した決断に命を賭ける潔さがありました。

抜くと決めたら、迷わず斬るべし(イメージ)

ぐずぐず生き延びようと思うから迷うのであって、最初からどうせ死ぬものと覚悟を決めたら、自分の決断を信じて後悔しない。

そういう生き方は、どんな結果であろうと清々しく全うできるでしょう。

どれを選ぼうと結局人生は一本道。「もっとよい選択肢がある(あった)かも知れない」という未練を振り捨てて、瞬間々々における最善を生きたいものです。

※参考文献:

  • 古川哲史ら校訂『葉隠 上』岩波文庫、1940年4月

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