【New】企画展「源頼朝はなぜ鎌倉を選んだか」取材!

この世で一番美味しいものは?徳川家康の側室・お梶の方は何て答えた?

戦国時代
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この世で一番美味しいものって、何ですか?

もちろん人の好みによってそれぞれでしょうが、それでも「あー、そうだよね」と納得してしまう答えもあります。

さて、それは何でしょうか?今回は戦国時代、徳川家康(とくがわ いえやす)に愛されたお梶の方(おかじのかた)のエピソードを紹介したいと思います。

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この世で一番美味しいものは?

ある日のこと、家康を囲んで家臣たちが美食談議に花を咲かせていたそうです。

やれ「鯛の膾(なます)が美味い」だの「鶴の吸い物が最高」だの「焼き鳥は雉に限る」だの……。

内心、退屈と闘うお梶の方(イメージ)

お梶の方は家康の傍らで静かに笑いながら(恐らく内心の退屈をこらえつつ)聞いていましたが、やがて男性陣から話題を振られます。

「女子(おなご)の意見も聞いてみたい。お方様、一番美味いものとは、何でしょうな」

そりゃあ美味しいものならいくらでも知っていますが、ここで下手に具体名を挙げると、それを喰ったことのない者から妬まれかねない……そこでお梶の方は、こう答えました。

「この世で最も美味しいものは、塩にございます」

「「「はあ?」」」

どんな料理を挙げるかと思えば、ただしょっぱいだけの塩とは……やはり女子は外界を知らぬゆえ、大したものも食っておらぬようだ……そんな嘲りの顔色を、お梶の方は見逃しません。

が、ここで張り合っても仕方がない(そのつもりなら、最初から塩などと答えない)ので、「わたくしは物知らずにございますゆえ」と笑って受け流したのでした。

その夜、家康が家臣たちと夕餉の席を囲むと、先ほど家臣たちが話題に挙げていた山海の珍味美食がズラリ勢揃い。

「「「おお……!」」」

「どうぞお召し上がり下さいませ」

「「「いただきまーす!」」」

これでテンションが上がらない訳がありません。いざ食わいでか……と家臣たちが一斉に料理を口にしたところ、ピタリと箸が止まってしまいました。

イメージ

「「「……え?」」」

「いかがなされましたか?今宵は皆様の好物ばかりを取り寄せましたゆえ、どうぞご遠慮のう召されませ……」

お梶の方は微笑みを湛えながら、家臣たちに食べるよう促します。

「いや、あの、その……」

「これは……味がせぬ……!」

それもそのはず。お梶の方は、すべての料理に塩を入れなかった(そして、塩気のある食材はわざわざ塩気を抜いた)のですから。

「塩を、塩を下さらぬか」

「あら。先ほど『塩などただしょっぱいだけでつまらぬ』と仰せにございましたゆえ、わざわざ手間暇かけて塩を抜かせていただきましたのに……」

「「「そんな殺生な!」」」

「……お方様、我らが悪うござった。どうか塩を!」

これは一本取られたわい……家康は呵々大笑、家臣たちの食膳も改めて味付けしてもらい、みんなで美味しくいただいたということです。

逆に、一番不味いものは?

「時に、お梶よ。この世で最も美味いものが塩と分かったが、逆に最も不味いものは何じゃ?」

後日、家康はお梶の方に聞いてみました。さぞや絶妙な答えが返って来るかと思いきや……

「塩にございます」

一番美味いのが塩だと言ったお梶の方が、一番不味いのも塩と言うとは。

「ほう……その意(こころ)は?」

「塩も過ぎれば、食えたものではございませぬゆえ」

料理を活かすも殺すも塩加減ひとつ……物の道理をわきまえたお梶の方の聡明さに、家康は大満足したそうです。

故老諸談(ころうしょだん)』によれば「もし男に生まれていれば、ひとかどの武将として大軍を率いて活躍したろうに、惜しいことだ」とささやき合ったと言われますが、

「それなら一つ、お目にかけましょう」

とばかり男装で馬に跨り、天下分け目の関ヶ原合戦(慶長5・1600年)に参陣。これで勝利は間違いなし!と家康は、彼女を「お勝の方」と改名させました。その後、大坂の陣(慶長20・1615年)にも同行したと言います。

終わりに

やがて家康が亡くなると出家して英勝院(えいしょういん)と号しますが、徳川家において重きを占め続け、三代将軍・徳川家光(いえみつ)の乳母として権勢を振るった春日局(かすがのつぼね)以上に尊重されたそうです。

英勝寺。Wikipediaより(撮影:三人日氏)

そして家光から鎌倉の扇ガ谷(現:神奈川県鎌倉市)に所領(※)を賜り、英勝寺(えいしょうじ)を創建。現代も鎌倉唯一の尼寺として、彼女の遺徳を現代に伝えています。

(※)彼女の祖先である太田道灌(おおた どうかん)の屋敷跡であり、他の親族についても大名に取り立てさせるなど、太田氏中興の祖として大きく貢献しました。

※参考文献:

  • 桑田忠親『戦国おんな史談』潮出版社、1981年

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