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【光る君へ】浮気と喧嘩ばかり?紫式部と藤原宣孝の結婚生活はどうだったのか

古典文学
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越前から戻ってきて、藤原宣孝と結婚した紫式部。果たして二人の結婚生活はどのようなものだったのでしょうか。
詳しい記録は残っていないものの、彼女たちが詠んだ和歌からその様子をうかがい知ることができます。
今回は『紫式部集』より、紫式部と藤原宣孝の結婚生活を見ていきましょう。

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早くも暗雲?

散った桜より、咲いている桃(イメージ)

折りて見ば 近まさりせよ 桃の花
思ひぐまなき 桜惜しまじ

【意訳】せっかく手折った桃の花を、どうかもっと近くで見てください。あっけなく散ってしまった桜の花など、惜しむことはないでしょう。

これは新婚当初に紫式部が宣孝に詠んだものです。

自身を桃の花、宣孝をふった女性(前妻?)を桜の花にたとえて

「散ってしまった桜の花より、今ここで咲いている桃の花を愛でて下さい」

というメッセージを送ったのでした。

新婚当初から「近まさりせよ」と詠んでいるのが気になりますね。

現実に「近まさり」しているのであれば、あえて詠む必要はないでしょうから。

実際に宣孝もそれなりに応える和歌を詠んではいるものの、あまり熱量が感じられません。

夫の愛情を求める紫式部に対して、別にそこまで気乗りしていない宣孝……「釣った魚にはエサをやらない」タイプだったのでしょうか。

早くも暗雲が立ち込めています。

さっそく浮気、秋の寂しさ

おほかたの 秋のあはれを 思ひやれ
月に心は あくがれぬとも

【意訳】あなたには秋を「あはれ」と感じる心がないのでしょうか?月に飽きることがないよう、私のことも飽きないで下さい。

せっかくの名月なのに、一緒に愛でたいあなたはいつもいない。そんな寂しさが詠まれた一首です。

宣孝は「あなたのご機嫌がよろしくないので、一緒にいたくてもいられませんでした」と言い訳しますが、そんな嘘を見抜けない紫式部ではありません。

秋は趣深くも物悲しく、伴侶の存在が嬉しく感じられる季節。

大切な時期を独りで過ごした胸中は、察するに余りあります。

「決して浮気しない」と誓ったのに……

物憂げに月を眺める紫式部(イメージ)月岡芳年筆

よこめをも ゆめいひしは 誰なれや
秋の月にも いかでかは見し

【意訳】決して浮気(横目)しないと誓ったのはどなたですか?あなたは秋の名月をどのように眺めたのでしょうね?

どのように眺めたって、そりゃ他の女と眺めたに決まっています。そんなの百も承知で皮肉の和歌を詠みました。

結婚前から浮気だ何だで騒いでいた男が、結婚したくらいで収まるはずもありません。

怒りの収まらない紫式部は、時おり宣孝が訪問しても門前払いを食らわせてしまいます。

「ご本命の”ついで”ではなく、ちゃんと”私”を訪ねてください!(意訳)」

紫式部の怒りは当然です。しかしこれでは浮気男が寄りつかなくなるのも無理はありません。

「何!私が悪いって言うの?悪いのは浮気する男の方でしょ?何で私があの浮気男にいい顔しなくちゃいけないの!」

そんな声が聞こえてきそうですが、浮気男とはそういう生き物だから仕方ないのです。

捕まえておきたいなら、多少ならざる妥協と忍耐が必要になります。

こんな事になるなんて……煙となった宣孝を偲ぶ

見し人の けぶりとなりし 夕べより
名ぞむつましき 塩釜の浦

【意訳】あの人(宣孝)が火葬されてしまったあの日から、塩釜という地名を聞くだけで、昔を思い出してしまうのです。

なかなか素直になれないまま月日は流れ、気づけば宣孝は亡くなってしまいました。

火葬の煙と塩焼きの煙が重なって、宣孝を思い出す日々。止まらない涙は、きっと煙が目にしみるせいです。

こんなに早く先立たれてしまうと知っていたら、もっと優しくしておけばよかった。

悔やんでも悔やみきれない紫式部は、一人娘の藤原賢子(けんし/かたいこ)を抱えて途方にくれるのでした。

終わりに

宣孝の死後、紫式部にアプローチする男性がいたようですが、彼女はことごとく袖にしました。

悲しみにくれる中、なんとか立ち直ろうと始めた創作活動の成果こそ、かの『源氏物語』と言われています。

また藤原彰子(道長長女。一条天皇女御)の女房として宮仕えを始めるのも宣孝の死後でした。

わずか3年ほどの結婚生活でしたが、紫式部にとって宣孝との日々は、『源氏物語』のそこかしこに表れています(諸説あり)。

果たしてNHK大河ドラマ「光る君へ」では、紫式部と藤原宣孝の結婚生活がどのように描かれるのか、今から楽しみですね!

※参考文献:

  • 南波浩 校註『紫式部集 付大弐三位集 藤原惟規集』岩波文庫。2024年2月

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