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【鎌倉殿の13人】いつの間にかフェイドアウト…殺された河津祐泰の仇討ち「曾我兄弟夜討の歌」

古典文学
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令和4年(2022年)NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、皆さんも観ていますか?筆者も毎週の楽しみにしております。

2月13日(日)放送予定の第6回「悪い知らせ」は石橋山で惨敗した源頼朝(演:大泉洋)が、逃げ延びた安房国で立て直しを図る回となりました。

……が、ちょっと時を遡って第1回「大いなる小競り合い」を思い出してみませんか?と、今回はそういう趣向でお送りしたく思います。

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いつの間にフェイドアウトしていた河津祐泰

さて、伊豆で頼朝を監視していた伊東祐親(演:浅野和之)には、二人の息子がいました。

一人は次男の伊東祐清(演:竹財輝之助)、頼朝を担ぎ上げるべく、北条宗時(演:片岡愛之助)と内通していましたね。

相撲(すまい)の達者として知られた河津祐泰。歌川国芳筆

もう一人は……そう、河津祐泰(演:山口祥行)。第1回では祐親にすがりつく工藤祐経(演:坪倉由幸)を突き倒す、非常な役目を務めています。

しかし第2回「佐殿の腹」以降、その姿を見かけないので忘れてしまった方もいるでしょう。

そう、彼は工藤祐経の襲撃によって命を落としているのです。

「雑魚に構うな!」

劇中、祐親は腰を抜かして逃げ出す祐経を放っておくよう言い放ちますが、史実では刺客の矢によって祐泰は討死。

物語の都合で自然とフェイドアウトする形となりましたが、祐泰には一萬丸(いちまんまる)と筥王(はこおう)という息子がいました。

「父上……っ!」「この怨み、晴らさでおくべきか!」

まだ幼かった子供たちは曾我祐信(そが すけのぶ)に引き取られ、やがて成長して曾我十郎祐成(そが じゅうろうすけなり)、曾我五郎時致(ごろうときむね)と改名。

工藤祐経を討ち果たす曾我兄弟。歌川広重「曽我物語図会」

十数年の雌伏を経てついに建久4年(1193年)5月28日、父の仇討ちを果たすのでした。これが日本三大仇討ちの一つとして有名な「曾我兄弟の仇討ち」です。

ちなみに、後の二つは「赤穂浪士の討ち入り(忠臣蔵)」と「伊賀越の仇討ち(鍵屋の辻の決闘)」とのこと。

父親の仇討ちを果たした曾我兄弟は間もなく討たれ(十郎祐成)、処刑されて(五郎時致)しまいます。しかしそんな末路が日本人の共感を呼び、『曽我物語』はじめ多くの文学作品(曽我物)に伝えられました。

今回はそんな「曽我物」の一つである「曾我兄弟夜討の歌」を紹介。にっくき仇・工藤祐経を討ち果たした様子が、鮮やかに描かれています。

曾我兄弟夜討の歌

歌川国芳「冨士裾野曽我兄弟本望遂圖」

曾我兄弟夜討の歌

此時二人の扮装(いでたち)は 母の賜ひし小袖をば

襷十字にあやとりて 共にたいまつ振り照し

仇工藤の陣屋をば 探せど如何に人はなし

如何はせんとたゝづめる 折しも見ゆる燈火の

影に二人は身を潜め 是れは工藤の局なり

祐経いづくと尋ぬれば 先頃すでに御陣がへ

不忠ながら是までの 御恩に報ひ候(さぶら)はん

いざ此方(こなた)へと招きける 雨戸がらりと押し開けば

工藤左衛門祐経は 前後もしらず伏にける

見るに二人の兄弟は 天にも昇る心地して

十郎五郎に討てと云ふ 五郎は兄に譲りける

聲を掛れば祐経は 枕元なる刀をば

取つて起きんとする折を 十郎疾(と)くも肩先を

五郎がついで首を取る 父の仇を報ゆれば

命は露ほど惜まねど 猶も奥へときつて入る

※剣光外史 編『新編軍歌集』湯浅粂策、1911年3月

七五調で綴られる物語は曾我兄弟の服装にはじまります。どこだどこだと探した結果、工藤局(くどうのつぼね)の案内で酔っ払って寝ている工藤祐経の元へ。

そのまま討ってしまえば楽ですが、ここは堂々と父の仇討ちを宣言。目を覚ました祐経が刀をとろうとしたところ、兄弟そろって斬りかかりました。

ついに仇の首級を上げた兄弟、悲願を果たした以上は命を惜しみはしないけれど、更に奥へと斬り込んでいったのでした……というところで〆となります。

エピローグ

そして兄の十郎祐成は討ち取られ、弟の五郎時致は捕らわれてしまいました。

曾我五郎時致。月岡芳年「月百姿 雨後の山月」

もう死んでしまった祐成は仕方ないとして、時致の武勇は惜しむべきものである……ここは烏帽子親の北条時政(演:坂東彌十郎)に免じて赦してやってはどうか。頼朝公はそう提案します。

しかし工藤祐経にも遺児がおり、息子の犬房丸(いぬぼうまる。後に工藤三郎祐時)が泣いて訴えたことから、やむなく時致を梟首に処すのでした。

河津祐泰が曾我兄弟にとってかけがえのない父親であったように、工藤祐経もまた犬房丸の大切な父親だったのです。

いかに仇討ちとは言え、不法に人を殺めた者は命をもって贖うべし。かくして仇討ちの一件は(少なくとも表面上は)落着したのでした。

この「曾我兄弟の仇討ち」、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」ではどのように描かれる(あるいは割愛される)のでしょうか。今から楽しみですね!

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