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【鎌倉殿の13人】忠と孝の板挟み…竹財輝之助が演じる伊東祐清の葛藤と決断

大河ドラマ
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あっちを立てればこっちが立たず、こっちを立てればあっちが立たず……人生、そんな板挟みの状況はできれば避けたいものです。

知人同士の喧嘩くらいならまだ可愛いですが、これが派閥同士の抗争など大事になると、どちらを立てるかの決断が生死(実際には殺されなくとも、政治生命を絶たれるなど)の重みを伴うこともしばしば。

菊池容斎『前賢故実』より、伊東祐清の肖像

今回は板挟みに葛藤した一人、源平合戦に散っていった伊東祐清(いとう すけきよ)のエピソードを紹介したいと思います。

彼はいったい、何と何の板挟みになったのでしょうか。

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頼朝公との深い絆

伊東祐清は伊豆国の豪族・伊東祐親(すけちか)の子として誕生しました。

通称は九郎(くろう)、生年は不詳ながら兄の河津三郎祐泰(かわづ さぶろうすけやす)が久安2年(1146年)ごろに生まれているため、それ以降と推測されます。

妹(実名不詳)は北条時政(ほうじょう ときまさ)に嫁ぎ、もう一人の妹・八重姫(やえひめ)は時政の婿となる源頼朝(みなもとの よりとも)公とも契りを交わしていました。

頼朝公にとって祐清は義理の伯父であり、また義兄でもある親密な関係でした。

伝頼朝公肖像。神護寺蔵

さらには成長した後に頼朝公の乳母であった比企尼(ひきのあま)の娘を正室に迎えたため、頼朝公とは乳兄弟も同然の間柄と、ますますその絆を深めます。

しかし安元元年(1175年)ごろ、父・祐親が頼朝公と敵対。自分の留守中(京都大番役として上洛)に八重姫に夜這いをかけた上に子供までもうけたことを怒り狂ってのことでした。

「流罪人の分際で、我が愛娘を手籠めにしようとは!」

さっそく手勢を集めて頼朝公を討ち取る手はずを整えますが、祐清は奇襲の計画を頼朝公に伝え、北条家へ逃げ込むように勧めます。

「さぁ、早く!」

「忝(かたじけな)い……!」

命からがら北条家へと逃げ延びた頼朝公は伊東家と絶縁状態になってしまうのですが、やがて治承4年(1180年)に頼朝公が反平氏の兵を挙げると、伊東父子は当然のごとくこれに敵対。

叛徒を鎮圧するべく東国の後見・大庭三郎景親(おおば さぶろうかげちか)らと連携して頼朝公に立ち向かいました。

「佐(すけ。頼朝)殿……日本(ひのもと)六十余州に号令する相国入道(しょうこくにゅうどう。平清盛)様に敵するなど愚かなこと……今からでも遅うはない。それがしがとりなすゆえ、どうか降伏(くだ)られよ!」

「……問答無用!」

大庭景親らに追い詰められる頼朝公たち(右端に身を潜めている)。年恒「石橋山合戦之図」

果たして一度は石橋山の合戦(現:神奈川県小田原市)に頼朝公らを撃ち破りますが、詰めの甘さで討ち洩らし、まんまと捲土重来を許してしまいます。

「……無念!」

寿永2年(1182年)2月15日、伊東父子は頼朝公に捕らわれ、面縛(めんばく。縛り上げて顔を隠させず、晒させること)の上で御前へ引き出されました。

忠か孝か……祐清の葛藤と決断

「いつぞやは『妻子』が世話になったな……『舅』殿」

「ぐ……」

頼朝公と契りを交わした八重姫は、頼朝公の逃亡後に我が子・千鶴(せんつる)を祐親によって殺され、その悲しみから入水自殺を遂げてしまいます(諸説あり、北条氏や千葉氏と再婚したとも)。

引き裂かれた家族の絆(イメージ)

愛しい妻と我が子の報い……祐親は処刑されたとも、釈放されたものの恥辱に耐えず自害したとも、その最期には諸説あるようです。

「さて、九郎殿」

祐親の時とは打って変わって、こちらは命の恩人である祐清。頼朝公としては当然助けるつもりでした。

「我らと共に戦うてはくれぬか」

ここで祐清は迷います。父・祐親と運命を共にするべきか、それとも頼朝公と新たな世を切り拓くか……まさに忠(頼朝公との新たな主従関係)と孝(祐親との親子関係)の板挟みです。

しかし、祐清は忠よりも孝を選びました。その決断には相当の葛藤があったことでしょう。

「親が罰を受けた上は、子がいかに賞せられたとて、それがどれほどの喜びにございましょうや。かくなれば、それがしも父に従いとう存じまする」

「……左様か……」

祐清の決意を尊重するため、頼朝公は泣く泣く祐清を処刑したと言われていますが、これにも諸説あるようです。

なおも抵抗を続けた祐清(イメージ)

鎌倉幕府の公式記録である『吾妻鏡(あずまかがみ)』には、この場で処刑した記述に加え、解放されて寿永3年(1183年)6月1日、木曾義仲(きそ よしなか)との戦い(篠原合戦。現:石川県加賀市)で討死したとも記述されるなど、矛盾点があります。

もしかしたら、頼朝公が(御家人たちに示しをつけるべく)処刑したことにして逃がしたのかも知れませんね。

終わりに

令和4年(2022年)放送予定の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では竹財輝之助さんが演じる予定の伊東祐清。

本当ならば、父(祐親)も義弟(頼朝公)も立てたかったことでしょうが、それが叶わず父に従った葛藤が、本作における見どころと期待されます。

竹財輝之助さんの好演が、今から楽しみですね!

※参考文献:

  • 大津雄一ら訳『新編 日本古典文学全集53 曾我物語』小学館、2002年2月
  • 五味文彦ら編『現代語訳 吾妻鏡 1頼朝の挙兵』吉川弘文館、2007年10月

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