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【書評】高橋慎一朗『武士の掟 「道」をめぐる鎌倉・戦国武士たちのもうひとつの戦い』新人物往来社

歴史本
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道路はまっすぐ・いつもキレイに・私物化禁止……公共スペースの管理は為政者にとって重要任務の一つでした。

きちんと整備された道路は為政者の権威を示すと共に、その土地を治める神様に対する敬意の表れでもあります。

鶴岡八幡宮から、海までまっすぐにのびる段葛(若宮大路)。

そこでルールを作るのですが、古来「上に政策あれば、下に対策あり」とはよく言ったもの。

庶民たちはあの手この手で規制をかいくぐり、何とかルールをうやむやにしようと必死です。

形を変えて現代まで続く、道路をめぐる戦いが幕を開けたのでした。

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法律から垣間見える、人々の暮らしぶりと当局の事情

本書では鎌倉時代に発せられた「御成敗式目」をはじめ、戦国大名の分国法にいたるまで、道を管理する掟を紹介。

ルールや法律と聞くと、何だか冷たくシステマティックな印象を受けますが、その裏には為政者と庶民の事情が垣間見えます。

「まったく、あいつらは……」頭を抱える当局(イメージ)

中には条文の中に「前にも禁止したじゃないか、守ってくれなきゃ今度こそ処罰するぞ(意訳)」「みんなで決めたんだから、ちゃんと守ってくれ(意訳)」なんて為政者の愚痴?が見え隠れするものまで。

現代に比べてはるかにルーズでフリーダムな人々が繰り広げる人間ドラマ。中世法制史を知ると、何だか親近感が湧いて来るようです。

ところでルーズと言えば、鎌倉幕府をはじめその後江戸幕府が滅ぶまで武家の基本法として伝えられた御成敗式目。

実はあれ、発布した幕府当局でさえすべて把握していなかったと言います。

「あれ?これ、前にも似たような法律が……」気のせいです、気のせい(イメージ)

御成敗式目の条文は第3代執権・北条泰時が最初に定めた後にも追加されていきますが、それを一覧にまとめた史料が残っていません。

なので中には「こういう内容の条文を追加した」ことはわかっても、具体的な条文については現存していないこともしばしば。

これだけでも当時の幕府当局がいかにアバウトであったかが察せられます。何だか微笑ましくもありますね。

とまぁこんな具合。他にもちょこちょこと当時の牧歌的な生活と当局によるゆるい取り締まりが垣間見えるので、読んでみて下さい。

法律を見れば、人々の暮らしぶりと当局の事情が見えてくるもの。

歴史や法律と聞いて堅苦しいイメージを持っている方も、ぜひ手にとっていただきたい一冊です。

書籍データ

『武士の掟 「道」をめぐる鎌倉・戦国武士たちのもうひとつの戦い』
著者:高橋慎一朗
出版:新人物往来社
発売:2012年2月22日
著者略歴:※「BOOK著者紹介情報」より
1964年生まれ。東京大学大学院博士課程中退。現在、東京大学史料編纂所准教授。京都や鎌倉をはじめとする日本各地の都市をフィールドとして研究を続け、文献史料を中心に中世都市の実態解明を目指している。

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