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【ネタバレ注意】冷酷な暗殺者…大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で梶原善が演じる善児って何者?

大河ドラマ
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同じ時分、畠山重忠は祐親の雑色だった善児を捕らえ、扱いに困って梶原景時に相談した。善児の所持品から、宗時の所有物が出てきたのだ。

「ひょっとして、三郎殿を討ったのはこの男では」

※NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第11回あらすじより

……伊東祐親(演:浅野和之)の忠実な下人として、第1回「大いなる小競り合い」の初登場から次々と暗殺任務をこなす善児(演:梶原善)。

善児(演:梶原善)。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」公式サイトより

これまで彼の手によって千鶴丸(演:太田恵晴。第1回)・工藤茂光(演:米本学仁。第5回)・北条宗時(演:片岡愛之助。第5回)・江間次郎(演:芹澤興人。第9回)らが倒れていきました。

いったい、彼は何者なのでしょうか。

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善児による犠牲者たち、史実での最期は……

何だかヒョロヒョロした風情と冷酷な仕事ぶりのギャップなどが話題を呼んでいる善児ですが、彼は「鎌倉殿の13人」オリジナルキャラクター(架空の人物)。

残念ながら、モデルとなった史実上の人物はいないようです。

ただし工藤茂光を除く3人の死には、いずれも伊東祐親が関与しているため、善児のような雑色が手を下している可能性は否定できません。

石橋山の合戦に臨む工藤茂光と北条宗時。歌川芳虎「治承四年兵衛佐頼朝石橋山義旗揚図」より

以下、4名の最期について実際どうだったのか、史料を見ていきましょう。

『曽我物語』が伝える千鶴丸の最期

伊東祐親の留守を狙って頼朝が夜這いをかけ、八重姫に産ませた千鶴丸。帰ってきた祐親は、平家に睨まれまいとこの子(3歳)を殺します。

「娘持ち余りて、置き所なくは、乞食非人などには取らするとも、今時、源氏の流人婿に取り、平家に咎められては、いかがあるべき。『毒の虫をば、頭を拉ぎて、脳を取り、敵の末をば、胸を裂きて、胆を取れ』とこそ言ひ伝へたれ。詮なし」

とて、郎等呼び寄せて、若君誘ひ出だし、伊豆の国松川の奥を尋ね、とときの淵に柴漬けにし奉りけり。情けなかりし例なり。

※『曽我物語』若君の御事より

【意訳】娘を頼朝にくれてやるくらいなら、乞食や非人に嫁がせた方がよほどマシだ。平家に睨まれたらどうするつもりか。言い伝えに「害虫は頭を潰して脳髄を繰り出し、胸を裂いて内臓を抉り出せ」とあるではないか。
という事で祐親は郎党に千鶴丸を連れ出させ、松川にある「とときの淵」に沈めさせた。誠に無情なことである。

……平家への忠義から、また娘に夜這いされた怒りから、頼朝と八重姫の子である千鶴丸を殺したところは大河ドラマと一緒ですね。

『吾妻鏡』が伝える工藤茂光の最期

石橋山の合戦で敗れ、命を落とした工藤茂光。太り過ぎがその一因だったと言われます。大河ドラマでも巨漢の米本学仁さんがキャスティングされていました。

茂光者行歩進退せ不に依て自殺すと云々。

※『吾妻鏡』治承4年(1180年)8月24日条

【意訳】茂光は歩くことがままならず、自害したそうな。

……史実では、敗走中みんなの足手まといにならぬよう自害したのでした。

『吾妻鏡』が伝える北条宗時の最期

こちらも石橋山の合戦で命を落とした北条宗時。大河ドラマでは工藤茂光と一緒に殺されていましたが、史実ではどうでしょうか。

三郎者土肥山自り桒原に降り、平井郷を經る之處、早川邊に於て祐親法師の軍兵于圍被れ、小平井名主紀六久重の爲に射ち取被訖。

※『吾妻鏡』治承4年(1180年)8月24日条

【意訳】三郎(北条宗時)は土肥山から桑原へ下り、平井郷まで来たところ、早川の辺りで伊東祐親の軍勢に包囲され、小平井の名主である紀六久重(きのろく ひさしげ)に討ち取られた。

……大河ドラマで宗時たちが殺されていたのも、早川だったのでしょうか。

『曽我物語』が伝える江間次郎の最期

大河ドラマでは八重姫を救い出そうとしていたところを殺された江間次郎。史実でも、その死はあっさりしています。

さて、佐殿、北の御方取り奉りし江間の小四郎も討たれけり。(以下略)

※『曽我物語』鎌倉の家の事より

【意訳】八重姫を奪った江間小四郎(江間次郎)は、頼朝の軍勢に討ち取られた。

……伊東祐親が処刑され(『曽我物語』による)、伊東祐清が平家に味方するため上洛(『曽我物語』による)した後、江間次郎は頼朝の軍勢に討ち取られました。

江間次郎の遺領は北条時政から義時に譲られ、義時は江間小四郎と名乗るようになります(一貫して北条義時と名乗っているのは、大河ドラマの都合です)。

まさかの主殺し、今度は梶原景時に仕える

さて、話を大河ドラマに戻しますと、善児は第11回「許されざる嘘」でまさかの主殺し。

原景時(演:中村獅童)に雇われて、赦免されようとしていた伊東祐親とその子・伊東祐清(演:竹財輝之助)を討ち取ってしまいました。

伊東祐親・伊東祐清の最期は『吾妻鏡』と『曽我物語』でそれぞれ違っています(ただし諸説あり)。

伊東祐親『吾妻鏡』…捕らわれて助命されるが自害/『曽我物語』…処刑される

伊東祐清『吾妻鏡』…自害した父に殉じて処刑を願う/『曽我物語』…平家に味方するため上洛、後に討死

※『曽我物語』における二人の最期についてはこちら

【鎌倉殿の13人】伊東祐親・祐清それぞれの末路…軍記文学『曽我物語』はこう書いた

頼朝の武士団でダーティな役回りを演じた梶原景時、そして梶原善が演じる暗殺者・善児。まさに打ってつけのコンビと言えるでしょう。

頼朝の懐刀として、汚れ役など一手に引き受けた梶原景時。歌川国芳「英雄大倭十二士 梶原平三景時」

同じ「梶原(景時は“かじわら”、梶原善は“かじはら”ですが)」つながりがシナリオ・キャラクターの着想ヒントになったのかも知れませんね。

ちなみに善児は、かつて三郎(北条宗時)を殺したことを赦す条件で景時に仕えます。

一度契約を結んでしまえば、脳内の設定は簡単に上書きされてしまうのか、伊東祐親&祐清には寸毫の未練も残しません。

こういう非人間的なところが、実にゾクゾクしますね。個人的には嫌いじゃないです(リアルにいたら、絶対に信用しませんが)。

終わりに

かくして千鶴丸を殺した伊東祐親と、それを止めなかった(共犯扱い?)伊東祐清が討ち取られました。

第10回「根拠なき自信」で見せた、三浦義澄(演:佐藤B作)と北条時政(演:坂東彌十郎)の懸念が的中してしまいました。

義澄「爺様(じさま)は、大丈夫なんだろうか……」

時政「佐殿(頼朝)を信じるしかあるまい……」

※NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第10回「根拠なき自信」より

当初は「男児を授かりたければ、人を赦すことで功徳を積むべし」ということで赦免しようとしていた源頼朝(演:大泉洋)。

しかし占いで「千鶴丸を殺した者が生きていては成仏できず、男児を授からない」という結果を知り、頼朝は掌を返したのでした。

義時は御所にとって返した。頼朝は関与を否定したが、義時は立場を忘れて言い募った。

「人を許す心が徳となるのではないのですか!それゆえ、望みのお子を授かるのでは!」

だが、頼朝の心をわずかにも動かすことはできなかった。

※NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第11回あらすじより

かつて対立したことはあっても、北条義時(演:小栗旬)にとっては祖父に当たる祐親を殺された無念は察するに余りあります。

まだまだ続く善児の暗躍。次の犠牲者は誰か(イメージ)

しかも、実際に手を下した善児がまだ生きていることで、千鶴丸は成仏できないとの占い結果に。

さて、これから善児は誰を殺し、どのような末路をたどるのか。三谷幸喜の脚本に注目ですね!

※参考文献:

  • 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』NHK出版、2022年1月
  • 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全読本』産経新聞出版、2022年1月

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